参院長野・広島と衆院北海道の補選で野党共闘
「共産党をリスペクトする」、立憲・小川氏が「赤旗」で
菅義偉政権で初の国政選挙となる参院長野・広島補選と衆院北海道2区補選が告示され、25日の投開票に向けて争われている。しかし新型コロナウイルス感染対策は予断を許さず、英国型変異株による「第4波」の懸念に掻(か)き消されるように盛り上がりに欠けていることは否めない。
もっとも衆院北海道2区、参院広島の2補選は自民党議員の不祥事が原因で生じた欠員を補う選挙だ。野党にとっては攻勢のチャンスにしようと、特に共産党が集票力・支持率は劣っても他党を圧倒する発行量の機関紙をバーゲニング・パワーにして「しんぶん赤旗」紙上で野党共闘を盛んに宣伝している。
同紙日曜版4月11日号には「共闘で大事なのは、お互いへのリスペクト」というタイトルで立憲民主党の小川淳也衆院議員が1面および6面に登場した。これまで共産党機関紙には政権批判に利用された元自民、元公明の古い政治家も登場することがあったが、立憲民主党の現職議員が共産党をリスペクトすると言って出て来るのだから、解釈にも困惑する。
が、それだけ行き詰まったということであろう。立憲民主党も共産党も菅首相が自民党総裁選以来掲げている「自助、共助、公助」という順番が大嫌いだ。コロナ対策でも政府支援を求めて「自助?そんなもんとっくにみんなやっているんです!」という具合に首相を追及している。同じように選挙で自前で候補を当選させる自助は限界なのだ。
同紙で「菅政権は崩壊寸前」と強弁する小川氏だが、「(菅政権が)持ちこたえているのは、野党が政権の受け皿として国民から信頼されるに至っていないから」だと自認し、「立憲民主党、日本共産党、社民党など野党各党・会派も小選挙区での一本化が不可欠」と述べている。
選挙の当選に「公助」はないが、選挙公報、政見放送があり、党には政党助成金が交付されている。助成金受け取り拒否をしている共産党は、昔は独自候補をほぼ全選挙区に擁立して多くが供託金を没収されていたが、その回避を図れるのが野党共闘の「共助」だ。政治資金を節約できる。
共産党と手を組む理由について小川氏は、「共産党は最近も、天皇制や自衛隊、日米安保など他の野党と政策上の相違点となっている問題は、連立政権には持ち込まないと言っています。旧ソ連や中国のような一党独裁の体制は将来にわたって取らないこともたびたび明言されています」と述べ、「相当柔軟になって」きたと歓迎している。
逆に小川氏の共産党への入れ込みがすごい。「私が日本共産党を最もリスペクトするのは、戦前のあの弾圧のなかで、政党としてはただひとつ、どんな犠牲を払っても反戦平和を貫いたことです。これには尊敬の念をいくら抱いても抱きすぎることはありません」と、共産党に入党してもおかしくないと思われるほどの傾倒ぶりを見せ付けた。
共産党にとっては、そこが小が大を呑(の)む「柔軟」(ソフト)戦術、統一戦線戦略の真骨頂だろう。7面は各補選の応援記事だ。衆院北海道2区・松木けんこう氏、参院広島・宮口はるこ氏、同長野・羽田次郎氏ら候補は3人とも立憲民主党候補である。ちなみに補選を扱う「立憲民主」4月16日号は共産党に触れていない。
これほどの「応援」に小川氏は“リスペクト”せざるを得ないのだろう。だが、神輿(みこし)に乗った立憲候補を担ぐ運動力・宣伝力が強い組織政党・共産党にどこへ連れて行かれるのだろうか。共産党にとって野党統一候補は自分の候補だ。同党の綱領路線では連立政権は通過点だし甘くはない。
編集委員 窪田 伸雄