「7月豪雨」と与党紙 コロナに加え災害対策続き
社会変容を促す国土計画を
「かつてない」と表現される災害が続き、各党メディアの中でも対策に追われる政権与党の機関紙はお手上げ状態に見える。これが一過性なら、国民のピンチに政府と共に万全の対策を取ると訴え、施策をアピールして紙面は切り替わる。
が、新型コロナウイルス感染拡大は収束のめどが立たない。水害も一昨年7月の西日本豪雨災害、昨秋の台風19号による洪水など激甚化する台風災害、今回、九州各地で観測史上最大の降水量を更新した「令和2年7月豪雨」と、記録破りの規模で繰り返し起きるようになった。
自民党の機関紙「自由民主」、公明党の機関紙「公明新聞」ともトップは2月以来の新型コロナに取って代わり、令和2年7月豪雨となった。
週刊の「自由民主」(7・21)は、1面トップで「豪雨災害対策本部/激甚災害の早期指定を」の見出しで扱い、同党が熊本県や鹿児島県で記録的な大雨となった「4日に令和2年豪雨対策本部(本部長・二階俊博幹事長)を設置し、早期復旧に向けた議論を重ねているほか、現地視察を行うなど、政府と一体で被災者支援を進めている」と強調している。
同紙見出し通り、「意見が続出」した激甚災害指定、特定非常災害指定の求めは、各地の豪雨災害に実施されることになる。ただ、近年の地球温暖化が原因とみられる自然現象の変化で降雨量が増加しているなら、今後は抜本的な防災・減災対策の見直しを進めてほしいところだ。
また、同紙1面の別の記事「骨太方針を精力的に議論」では、経済財政の運営と改革の基本方針(骨太の方針)策定に当たる議論で、新型コロナ感染対策によって「社会全体のデジタル化の流れが改めて浮き彫りになった」として、「ポストコロナの『新たな日常』を実現するため、社会全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する」としている。
DXはIT(情報技術)の浸透で生活のあらゆる面が良くなることだが、見えないウイルスを相手に感染防止を図るには密集を避けるため、テレワーク、ネット通販、オンライン授業など人が集まらなくて済む社会へとさまざまな仕組みを変えていく方向にある。
日刊の公明新聞も5日付1面に熊本県などの豪雨被害をトップに押し込んで以来、国会議員、県議、市議らの被災地視察など豪雨災害が1面を連日埋めた。同紙10日付2面には、「避難体制総点検訴え」の見出しで高橋光男参院議員の9日参院内閣委員会の質問を扱っている。
高橋氏が、14人の犠牲者を出した熊本県球磨川(くまがわ)村の特別養護老人ホーム「千寿園」に触れ、改正水防法で危険区域にある福祉施設に義務付けられた避難確保計画策定や訓練の進捗(しんちょく)を尋ねたところ、「国土交通省側は今年1月の時点で、避難計画の作成対象になる7万7906施設のうち、3万5043にとどまるとした」という。
千寿園は避難確保計画を作って避難訓練もしていたが、今回の豪雨に通用しなかった。高橋氏は垂直避難ができる設備の整備を求めたが、浸水のスピードの速さはあっという間だったと報道されており、高く建て増しての垂直避難でも入所者が間に合うか不安だ。福祉施設はじめ危険区域の居住を避ける方向に誘導しなければ被害は後を絶たないだろう。
いずれ、新型コロナなど感染症対策で東京など都市に人口が集中する在り方を変え、地方では危険区域からの人口移動など社会変容を促す国土計画の見直しを与党は急がなければならないのではないか。
編集委員 窪田 伸雄