TBSのイヤホン事件、ネットで偏向報道の検証可能に
ネットで偏向報道の検証可能に
論壇に期待される役割の一つに、新聞・テレビの偏向報道に対する監視がある。選挙報道については、特にそれが重要だ。
月刊誌11月号で偏向報道をテーマした論考で目立ったのは、元時事通信社特別解説員の加藤清隆と、米カリフォルニア州弁護士でタレントのケント・ギルバートの対談「トランプも安倍も報道被害者」(「Hanada」11月号)だ。衆議院解散後に編集された12月号では、同じくケントと気象予報士の半井小絵(なからいさえ)の対談「落ちたイヤホンが伝えた『ご主人サマ』の声」(「真相深入り!虎ノ門ニュース」)=「WiLL」12月号=)などがある。
後者の対談については、説明が必要だろう。安倍晋三首相が記者会見で、衆議院解散の意向を示した先月25日夜、報道番組「NEWS23」(TBS)の放送中に“事件”は起きた。安倍首相はスタジオで、解散した理由の一つである消費税について説明していた時、キャスターの星浩の肩に垂れ下がったイヤホンから「早くモリカケ!」という(たぶんディレクターの)声が漏れ、それがマイクに拾われ、全国に流れるという放送事故が起きた。
「TBSの正体がバレてしまいましたね。局全体を通して、まだモリカケをやりたいと言っているわけだ」と、ケントが語るように、森友・加計(かけ)(モリカケ)問題をことさら取り上げて「安倍降ろし」をやろうという偏った意図が表に出てしまったのだ。だから、ケントは「これはまさに放送法違反ですから、やってはダメなんです」と断じた。
選挙に関わるテレビの偏向報道は今に始まったことではない。記憶に新しいのは、1993年に起きたテレビ朝日の「椿事件」。この年の衆議院選挙では、自民党の議席が過半数を割り、非自民の細川連立政権が誕生した。
この選挙の3カ月後、当時の取締役報道局長、椿貞良が反自民の連立政権の成立を助ける報道を行うとの方針を局内でまとめたという趣旨の発言を行い、放送法違反が疑われた事件だ。
TBSに限らず、今回の選挙報道では、モリカケ問題に異様なこだわりを見せるテレビ局が多かった。前出の加藤は「打倒安倍のためなら公正も公平もかなぐり捨ててもかまわない、という雰囲気になっているのではないか」と語ったが、実際テレビで公然と偏向報道が行われたのは紛れもない事実である。
新聞がテレビを監視すればそんことはやりにくいだろうが、「日本のテレビ局の問題点は、すべて新聞社の系列会社だということ」で、テレビ局による偏向報道は野放し状態だ。
ただ、イヤホン事件については、ネットで批判が高まったように、今はネットが既存メディアを監視する役割を担うようになってきている。新聞・テレビがいくら「モリカケ隠し解散だ!」と、反安倍をあおり立てたにもかかわらず、自民党が大勝したのは、野党の分裂に加え、ネットの影響が強まっていることも要因だろう。(敬称略)
編集委員 森田 清策