婚姻制度の意義
個人・自由優先は家庭崩壊招く
特集「家族の『逆襲』」を組んだ月刊「正論」3月号に、麗澤大学教授の八木秀次の「家族解体政策の流れを断ち切る『夫婦別姓・再婚禁止期間』最高裁判決」と、長崎大学准教授の池谷和子の「個人の自由を尊重するのもいいですが、子供のことを忘れないで」の二つの論考が載っている。
共通するのは、夫婦同姓を「合憲」とした最高裁の判断が出たことを契機に、次世代を担う子供の幸福の観点から家族一体の重要性を説いている点だ。家族問題では最近、新聞・テレビの論調が夫婦別姓ばかりか「同性婚」まで容認するなど、個人の自由に偏った風潮を強める中、当人の幸福だけに目を奪われることなく、子供の幸福の実現と社会の発展にまで視野を広げた優れた論考である。
まず、八木は「男女の婚姻だけが優遇されるのはそもそも婚姻(結婚)は子供を産み、育てるための制度として構築されており、子供を健やかに育てるためには夫婦が一体となって協力しなければならないことから、その関係を守り、制度として優遇している」と指摘。その上で、「結婚は、そこにおいて次世代の国民や労働力、社会保障の担い手を産み出し、育てるがゆえに国としても優遇策を打ち出している」と、婚姻制度の意義を強調する。
一方、池谷も「家庭では、夫婦がお互いに助け合うのみならず、夫婦の間に子供が生まれ、その子供が両親の下で社会の常識から様々な価値観、他人を思いやることの重要性まで、共に生活する中で学び人間として成長していく場でもある。家庭こそが次世代の我々の社会を支えていく人材を育てるのに最も適した場所」と強調。八木と同じく、夫婦と子供の幸福は切り離せるものではなく、そのような家庭のあり方は社会の発展につながるという見方を示している。
夫婦の幸福に重点が置かれるようになった結婚観の歪みは個人の自由、権利、平等に偏った戦後価値観を象徴するものと言えるが、その価値を柱に家族制度を変えるなら家族の崩壊を招くのは間違いない。その危機感を背景とする二つの論考は個人主義や自由主義から脱して、家族の一体性と子供の幸福、そして社会の発展の視点から家族制度の再考を促している。
編集委員 森田 清策