健康で長生きの秘訣 幸福なつながりを持つ

食生活や運動以上の健康要因

 「敬老の日」(21日)を前に、総務省が発表したところによると、わが国では80歳以上が1000万人を超えた。男女とも平均寿命が80歳を超えている。長寿はめでたいことではあるが、同時に少子化も進んでおり、論壇ではどうしても人口減少や社会福祉制度の崩壊といった話題が多い。

 月刊誌10月号でも、石破茂・地方創生担当大臣と河合雅司・大正大学客員教授の対談「人口急減という『静かなる有事』」(「新潮45」)や、増田寛也・日本創成会議座長、冨山和彦・経営共創基盤代表取締役CEO、藻谷浩介・日本総研主席研究員による鼎談(ていだん)「『地方消滅』回避の処方箋」(「文藝春秋」)などがある。

 そんな中で、超高齢社会に生きる誰もが目指す必要のある健康寿命を伸ばすヒントを示しているのが予防医学研究者の石川善樹氏の論考「寿命は友だちの数で決まる」(中央公論)だ。石川氏は、米国心理学者の研究を紹介しながら、「つながりと健康」には因果関係があると説く。たとえば、「不幸な結婚生活を送る者は、独身者に比べて、健康度が低い」という。

 また、「人とのつながりを欠くことは、健康を脅かす重大な要因である」とも指摘。そして、その効果はたばこ、血圧、コレステロール、肥満などにも匹敵するという。だとすれば、幸福な結婚生活を送る者は、独身者に比べて、健康度が高いということも言えるだろう。

 何が健康に影響を及ぼすかについては、一般的には食生活、適度な運動、そしてストレスなどが挙げられる。そのうちどれが最も大切かというのはなかなか結論の出ない難問だが、言えることは、人と人のつながりは、食生活や運動に匹敵するか、それ以上の健康要因であるということだ。

 論考では、興味深いデータも紹介している。ハーバード大学の研究者(当時)の西晃弘氏らが日本人高齢者を対象に行った研究によると、介護を受けた女性は、配偶者に介護してもらうと最も長生きする。一方、息子の嫁に介護されると、配偶者に比べると、4・3倍も亡くなりやすいという。

 石川氏は「誰とつながるかによってその後の健康が変わる」ことを示す研究だとしている。その意味は、ストレスのないつながりが健康には大切だということだから、健康寿命を伸ばすためにも、幸福な家族関係が大切だということになろう。(敬称略)

 編集委員 森田 清策