民主党の支持率低迷 「出自バラバラ」党の限界
反安倍・自民以外の目的不在
安全保障関連法が成立した直後の19、20の両日、新聞各社は世論調査を行った。安保法に対する賛成、反対ではいずれの調査も反対が上回り、安倍内閣への支持率も不支持が多かった。ここまでは想定内だが、注目されるのは内閣支持率が自民党関係者の懸念ほどには下がらない一方で、「違憲法案だ!」「強行採決だ!」と、安保法制に強硬に反対した民主党の支持がまったく広がっていないことだ。
反安保法制キャンペーンを繰り広げる朝日新聞社が同法成立後に行った緊急世論調査によると、安倍内閣に対する支持率は35%、不支持率45%。成立前の前回調査では、支持36%、不支持は42%だったから、わずかな変化にすぎなかった。
一方、安保法制支持派の産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査では、内閣支持率は42・6%、不支持率47・8%。これを成立前調査と比べると、支持率は0・9ポイントの微減にとどまっている。その他の報道機関の調査でも、内閣支持率は産経・FNN調査より少し下回るが、極端な変化はなかった。
安保法成立の政党支持率への影響もまた興味深い。読売新聞社調査では、自民党は成立前に比べて4ポイント下げて33%。一方、民主党は成立前より1ポイント上げて11%だった。共同通信調査となると、自民、民主の両党とも支持率を減らして、それぞれ32・8%(2・2ポイント減)、9・5%(1・0ポイント減)となった。
有権者の政党支持は、安全保障政策だけで決まるものではない。政策全般や政権担当能力を含め、総合的に判断して決めるのだから、前述の数字はそれほど驚くものではない。それでも、国会議事堂を取り巻くデモ隊と連携し、「立憲主義をないがしろにするものだ」などと、安保法が成立すると、わが国の民主主義が終わるかのごとくに叫び続けた民主党への支持が低迷を続けるのは、どうしたことか。
リベラル左派のメディアがいかに反安保法制の大キャンペーンを繰り広げようが、その偏向報道の影響が限定的であったとすれば、日本の有権者の成熟度もかなりのものであると称賛したくなる。しかし、民主党への支持が伸びない要因の第一は有権者の賢明さというよりも民主党の体質そのものにある。
著述家の古谷経衡氏の論考「民主党にだけは言われたくない」(「新潮45」10月号)は、有権者の信頼を集めることのできない民主党の致命的な欠陥を鋭く突いている。「民主党とは一体どのような主義・主張の党なのか、という問いに答えることは極めて難しい」と、同氏が書いているように、民主党は元自民党系、旧社会党系、旧民社党系など、「その出自はてんでバラバラ」で、「唯一明確な輪郭を帯びるのは、『反自民』の狼煙だけであろう」。
また、古谷氏は「この国をどうしたいのか、という意志の提示がない民主党を私はリベラルとは呼ばない」と切って捨てる。この党に意志があるとすれば、自民党からの政権奪取だけである。そのための寄り合い所帯でしかないから、かつては“選挙互助会”“理念なき野合”と言われ続けたのだ。
そして、有権者に一度「NO!」を突き付けられて野に下っても、政権交代のための数集めという体質はいまだ変わらず、安倍総理や自民党という「その敵のお陰で生きながらえている」のである。リベラル左派のメディアがいかに反安倍、反安保法制キャンペーンを繰り広げようとも、民主党への支持が広がらない原因は、てんでバラバラの党の体質にある。そして、その体質にどっぷり浸った同党議員の言動は人気取りのパフォーマンスにすぎないことを有権者に見透かされているのだ。
古谷氏は論考の中で、衆議院での安保法案採決の際、同党の辻元清美議員が「お願いだからやめて」と涙声で懇願した例を挙げながら、「民主党議員らの狂騒は、結果パフォーマンスとしてしか認知されていなかったことを世論調査の数字は冷徹に物語っている」と指摘している。
編集委員 森田 清策