「ジャパン・タイムズ」の偏向 政府の広報外交力問われる
「正論」8月号の論考で、ロバート・D・エルドリッヂ氏が「自浄作用のないメディアをチェックすべきだ」と訴えたのは、沖縄の地元紙についてだけではない。英字紙「ジャパン・タイムズ」の報道姿勢も批判している。「毎日のように普天間飛行場近くで海兵隊員に汚い言葉を投げつける『プロ市民』の実態を指摘したことで、なぜか個人攻撃を受けたこともある」と、自身の体験を披露した。
ジャパン・タイムズの偏向報道については上智大学名誉教授で弁護士の花見忠氏が「WiLL」9月号に、論考「朝日新聞よりひどいジャパン・タイムズの反日、侮日報道」を寄せている。
「自国では通用しないレベルの低次元の情報や論説などを英語で書き散らす無責任な在日外国人の執筆する記事が、扇動的な大見出し付きで頻々(ひんぴん)に掲載されており、到底クオリティ・ペーパーとは言えないような側面がある」と、同紙の質の低さを嘆いている。また、「ほぼ毎週のように寄稿、歴史問題を含め、朝日新聞の捏造反日記事と同種の意見を繰り返し開陳している」執筆者もいるという。
日本語の新聞でも、売らんがために扇動的で偏向した報道を行う新聞はあるが、その情報を鵜呑(うの)みにして踊らされる日本人読者はそれほど多くはないだろう。その他のメディアから多種多様の情報を得ることができる環境に生活するからだ。
「WiLL」の論考で、宮本氏は沖縄の地元紙の多くの読者は、その偏向報道について気づいていないと分析した。なぜなら、エルドリッヂ氏が本紙の「ビューポイント」で「沖縄本島で2紙合わせてシェアは99%」と指摘したことからも推察できるように、「他の情報と接して比較する術が少なく、事実を知る機会が閉ざされている」(宮本氏)からだ。
この構図は、ジャパン・タイムズの影響力について考える上でも参考になる。日本人には馴染(なじ)みはなくとも、エルドリッヂ氏は「在日外国人に非常に影響力のある媒体で、日本語を読めない外国人たちにとっては日本の情報の窓口である」という。つまり、日本語の習得が十分ではなく、英字紙に情報収集を頼るような外国人は、たとえ極端な思想を持った活動家まがいの執筆者による原稿でも、他の日本語のメディアと比較することができないため、その影響を受けやすくなる。その中には、当然ジャーナリストも存在し、自国に向けて日本に関する情報を発信しているのだから、日本の国益を損ねる危険性をはらむ深刻な状況を作り出す。
「日本は広報外交(パブリック・ディプロマシー)もできなければ、情報戦がダメな国ですので、戦わずして負けてしまう可能性がある」と、エルドリッヂ氏が指摘するような事態になる危険性が高い。政府が広報外交力を高めるとともに、外国人に影響力を持つ保守系の英字新聞の必要性も指摘しておきたい。
編集委員 森田 清策