「2025年問題」への備え 「人生90年」時代の制度づくり

 1947~49年生まれの「団塊の世代」が今から10年後の2025年に、全て75歳以上となる。5人に1人が後期高齢者になる計算だ。

 有識者でつくる日本創成会議の首都圏問題検討分科会(座長・増田寛也元総務相)が6月はじめ発表した推計と提言が波紋を呼んでいる。今後、埼玉、千葉、神奈川3県を含む東京圏で高齢者が急増し、25年に介護施設が約13万床不足するとみられ、その対策として東京圏に住む高齢者に地方移住を進めているからだ。

 「中央公論」7月号は、同会議の提言内容を「東京圏高齢化 危機回避戦略――1都3県連携し、高齢化問題に対応せよ」と題して掲載した。東京圏の75歳以上は今後10年で約175万人増える。これは全国の増加数の3分の1。そうなると、十分な介護サービスを受けられない“介護難民”が多く出る恐れがある。

 これを見越して、介護施設を整備しようにも、大都市は土地の確保が難しい。しかも、介護需要が高まれば、人材が東京圏に流入し、地方の人口減少に拍車がかかる懸念もある。

 提言は、北海道函館市や高知市、大分県別府市など介護サービスが整う41地域を移住候補地として公表した。地方移住が進めば一石二鳥というわけだが、受け入れる側も高齢者が増えることで、医療費負担が重くなるなどのデメリットがあるから、実現にむけたハードルはいくつもありそうだ。

 団塊の世代が全て後期高齢者となる「2025年問題」については、「文藝春秋」7月号も、ジャーナリストの森健の論考「二〇二五年『老人大国』への警告」を掲載した。現在、500万人と言われる認知症の高齢者は10年後に700万人に増えると予想される。

 09年に、東大に発足した「高齢社会総合研究機構」(IOG)の機構長、大方潤一郎教授の説明として、論考が挙げた高齢者の暮らしに必須なことは三つ。「安全安心住宅」「引きこもり防止」「住宅ケア体制の確立」だ。そして、重要なのは「心身の健康」を高く維持することで、それには①社会性があって②毎日よく働き③よく肉料理を食べることが大切だそうだ。健康な高齢者が1人でも増えることは社会の負担が増えるのだから、当然のことではある。

 しかし、“健康長寿”でいられない高齢者もいる。認知症の高齢者を狙った財産目当ての養子縁組や、終末医療(延命措置の中止など)の問題など、超高齢社会の実情に合うように法制度や医療制度を整備することは喫緊の課題である。(敬称略)

 編集委員 森田 清策