「象徴の旅」声震わせられ回想
にじむ被災地や沖縄への思い
天皇誕生日前に最後の御会見
天皇陛下は85歳の誕生日を前に、皇居・宮殿「石橋の間」で最後となる記者会見に臨まれた。戦争の記憶、被災地や沖縄に寄せる思い、国民への感謝。陛下は時に声を震わせながら、皇后陛下と共に歩んできた「象徴としての旅」を振り返られた。
会見は20日午後に約20分にわたり行われた。記者からの質問は昨年同様1問のみ。現在の心境と国民に伝えたいことについて問われた陛下は、準備してきた原稿を両手に持ち、普段通りの穏やかな口調で語り始められた。
西日本豪雨や北海道地震など今年各地で相次いだ災害について触れた後、話題は戦後日本の歩みに移った。沖縄の苦難の歴史に触れたときから、陛下の声は次第に震え始めた。皇太子時代を含めて11回現地を訪れたことを振り返り、「沖縄の人々が耐え続けた犠牲に心を寄せていくとの私どもの思いは、これからも変わることはありません」と述べられた。
戦後の節目に重ねてきた国内外での「慰霊の旅」。長年心を寄せてきた障害者スポーツのめざましい発展。在外日系人や日本で働く外国人への思い-。陛下はあふれる感情をこらえるような様子で、印象深い出来事について言葉を続けられた。「結婚以来、常に私と歩みを共にし、私の考えを理解し、私の立場と務めを支えてきてくれました」と皇后陛下への感謝の言葉を述べた際は、ひときわ声が震えた。
陛下は最後に「来年春に私は譲位し、新しい時代が始まります」と切り出し、皇太子殿下と秋篠宮殿下が皇室の伝統を引き継ぐと言及。「国民の皆が良い年となるよう願っています」と述べ、平成の終わりの誕生日会見を締めくくられた。