天皇、皇后両陛下 元日本兵の家族と面会


「戦後長年の困難」いたわる

 【ハノイ時事】ベトナムを公式訪問中の天皇、皇后両陛下は2日午後、太平洋戦争終結後にベトナムに残り、同国の独立運動に加わった元日本兵の家族らと滞在先のホテルで面会された。宮内庁によると、今回の面会は両陛下の希望を踏まえて実現したという。

ハノイ 元留学生らと御懇談も

 両陛下と面会したのは、フランスからの独立戦争後に日本へ引き揚げる元兵士と同行できず、現地に残されたベトナム人妻や子供の日系2世ら計15人。天皇陛下は通訳を介して家族らの言葉に耳を傾け、一人ひとりの手を握って「いろいろとご苦労もあったでしょう」「どうぞお元気で」といたわりの言葉を掛けて回られた。

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天皇、皇后両陛下は元残留日本兵家族と言葉を交わされた=2日、ベトナム・ハノイ(代表撮影・時事)

 両陛下と家族との交流は予定時間の15分間を過ぎても続き、20分ほど延長された。この日出席した家族の中では唯一の元日本兵妻、グエン・ティ・スアンさん(93)は面会終了後、「私は戦後、長年さまざまな困難に遭いましたが、きょう両陛下とお話しできて本当に感動し、感謝しています」と語り、目を潤ませた。

 両陛下はこれに先立つ同日午前、孔子を祭るため1070年に建立された史跡「文廟(ぶんびょう)」を訪れ、日本への元留学生や、経済連携協定(EPA)で日本を訪れる予定の介護福祉士候補者らと懇談。午後はハノイにある自然科学大学生物学博物館を訪れ、天皇陛下が皇太子時代にベトナムへ寄贈した新種のハゼの標本などを見学された。

 夜は滞在先のホテルで開かれた日本大使夫妻主催のレセプションに出席。結合双生児として生まれた兄弟「ベトちゃんドクちゃん」の弟グエン・ドクさん(36)や、日ベトナム特別大使で俳優の杉良太郎さん(72)らと笑顔で言葉を交わされた。