生前退位に課題山積
新元号、呼称、住居…
皇太子も不在に
生前退位の意向を示しておられる天皇陛下が、「お気持ち」を表明されたのを受け、今後、国会などで陛下の生前退位をめぐる議論が進むとみられるが、天皇の生前退位は、現在の憲法や皇室典範では想定されていない。実現には退位制度の新設に加え、新元号や退位された天皇の呼称、住居など、新たに決めなくてはならない問題が山積している。
1979年制定の元号法は、「元号は皇位の継承があった場合に限り改める」と一世一元制を規定しており、生前退位が実現すれば新元号を決めることになる。89年の前回の改元の際は、昭和天皇の逝去当日、有識者による「元号に関する懇談会」の意見を踏まえ、三つの候補の中から「平成」が選ばれた。閣議決定を経て、当時官房長官だった故小渕恵三氏が崩御の約8時間後に発表した。
皇室典範には退位についての規定がないため、御退位後の天皇の呼称や役割についても新たに法整備をする必要がある。歴史上、太上天皇や上皇、法皇などの呼称があったが、「天皇より上の立場があるとの印象を与え、現代にふさわしくない」とする識者の意見もあり、慎重な議論が必要だ。
典範は皇太子を「皇嗣(皇位継承順位1位の者)たる皇子(天皇の男子)」と規定しており、生前退位が実現すれば皇太子が不在になる。皇室典範には「皇太弟」の規定はなく、皇太子殿下に代わって皇位継承順位1位となる弟の秋篠宮殿下の呼称や御役割についても検討されることになる。
御退位後の住居をどうするかも課題となる。現在、天皇、皇后両陛下は皇居・御所に、皇太子殿下御一家は赤坂御用地の東宮御所に住んでおられる。陛下は即位後から93年12月まで、赤坂御所(現在の東宮御所)から公務のため皇居に通っておられた。
皇太子殿下の誕生日の2月23日が新たな天皇誕生日として祝日になることも想定される。その場合、現在の天皇誕生日(12月23日)をどうするかなども課題として浮上しそうだ。