大学改革提言、教育や研究の質向上を図れ
国会では相も変わらず“安倍内閣打倒”を掲げる野党が学校法人「森友学園」「加計学園」問題で不毛な追及を続けている。
少子高齢化時代における大学の在り方、将来を託せる人材の育成についても、国会で真剣に検討してもらいたい。
少子化時代の人材供給源
少子化による新卒採用者の減少、質の低下は深刻な問題だ。大学を新規人材の供給源と考える経団連は、警鐘を鳴らす意味で「今後のわが国の大学改革のあり方に関する提言」を公表した。教育や研究の質を高めるため、大学の連携や再編・統合を早急に進める必要性を強調。制度の改正や見直し、経営体質改善などについても論じている。
18歳人口はピーク時の205万人から2040年には88万人に減少する見込みだ。一方、大学数は微増、国立大学の定員数もほぼ横ばいで、私立大学の4割が定員割れしている。こうした現状を憂い、17年時点で国立86校、公立89校、私立604校という大学の数や規模の適正化が不可避だとしている。
提言では、地域の拠点大学を中心とした国立大学の再編・統合を掲げ、一法人が複数の大学を運営できるよう法改正の必要性を訴えた。持ち株会社方式の「地域国立大学機構」を設立し、傘下の大学間で研究や教育カリキュラム策定、教員の兼務などを共同で行う案を示している。
私立大学については、経営が悪化した大学の早期撤退や再編を促す仕組みづくり、学部・学科単位での事業合併・譲渡の容認を求めている。経営改革に向け、助成や共済事業を担う日本私立学校振興・共済事業団の相談機能を強化するよう提言。再編など経営改善に取り組めば助成金を与える案を挙げた。
10~20年後に、わが国の労働人口の約5割が就いている職業はAI(人工知能)やロボットによって代替可能になると言われている。人口減少社会・労働力不足を乗り越える観点から、先端技術への対応も不可欠となってくる。文系、理系双方の知識に基づく法体系や倫理哲学などの構築が重要性を増すため、入試での区分を廃止するなど、文・理融合を通じた人文社会科学系教育の強化も求められる。
多様で幅広い知識と教養を身に付け、深く考え抜き、自らの言葉で解決策を提示できる人材が必要とされている。さらに、大学が推進すべき教育改革として「日本人学生の海外留学の奨励」を指摘する意見も多く、グローバル人材へのニーズが提言の中に示されている。
また国立大学が収益を上げるため、外部経営者の経営参画でマネジメント力強化を図る案も提言。オープンイノベーションによる事業創出や、大学発ベンチャーの新株取得を容認する規制緩和など、財務基盤強化につながる施策も求めている。
廃校は学生に甚大な被害
最悪なのは、大学が突如経営破綻し、運営から撤退してしまうことだ。残された学生・教職員の行き場がなくなってしまうので、これだけは避けなければならない。内閣に省庁横断的な会議を設置し、大学の再編・統合に関するグランドデザインを策定する必要がある。悠長に考えている時間はない。