18歳成人、消費者被害対策に教育が重要
改正民法の成立で、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることになった。2022年4月1日に施行される。1876(明治9)年の太政官布告以来、約140年ぶりの大改革であり、社会に与える影響は大きい。懸念される課題には万全の対策と準備を急ぐ必要がある。
ローン契約なども可能に
少子高齢化が急速に進む中で若者の社会参加を促し、「大人」としての自覚を高めるのが狙いである。施行まで4年弱の期間があるが、政府は「施行までの期間を十分活用し、周知をしっかり図っていきたい」(菅義偉官房長官)としている。選挙権年齢が18歳以上となったのに合わせる意味もある。
世界的にも「18歳成人」は主流となっている。経済協力開発機構(OECD)に加盟する35カ国のうち英独仏など32カ国が18歳を成人年齢としている。
ただ文化的にも、いわゆる子供の「自立」や「親離れ」が早い欧米と比べ、伝統的に親への依存傾向の強い日本では事情が違う面がある。成人年齢引き下げが、すんなりと定着するか楽観はできない。
子供を装って、親から金を詐取する「オレオレ詐欺」の被害が多発するのも日本独特の文化的社会的背景がある。18歳成人の採用がこうした親子関係に、どのような影響を与えるかも注目される。
今回の民法改正とそれに関連する22の法律の見直しによって、18歳でも親の同意なしに携帯電話やローンなどの契約ができるようになる。また、有効期限10年のパスポートも18歳から取得可能となる。
一方で、飲酒や喫煙が許される年齢は健康への影響を考慮して20歳に据え置かれた。非行につながりかねないとして、競馬や競輪などギャンブルも20歳未満禁止を維持する。当然の措置である。
最も懸念されるのが、ローンなどの契約年齢が引き下がることによる消費者被害の若年齢化である。親の同意がない未成年者の契約の「取り消し権」が18歳以上には認められなくなるため、悪徳業者による被害が拡大する恐れがある。
政府はこういった懸念から、民法と合わせて消費者契約法を改正し、「就活商法」や「デート商法」など、若者が被害に遭いやすい契約について取り消せるようにした。
悪徳業者が若者を狙った新手の詐欺的商法を考え出すことも予想される。悪徳商法にはこれまで以上に厳しく目を光らせ、法整備が追い付かない状況が起きないようにする必要がある。
消費者被害に巻き込まれないためには、高校での教育が極めて大切になってくる。消費者庁や文部科学省は2020年度までに消費者教育の授業を全国の高校で行う方針だが、成人となるための重要教育として実施してほしい。
成人式は適切な時期に
大人の自覚を持ってもらうために、節目となる成人式も重要度を増すが、式をいつ行うかも課題だ。多くの自治体が1月に開いているが、18歳で成人式となると大学受験シーズンと重なる。最も適切な時期を各自治体が考えていかねばならない。