教科書問題から我田引水な教委改革批判する「サンデーモーニング」
◆異例なのは竹富町側
教育委員会を改革する地方教育行政法改正案(教委改革法案)が通常国会で15日に審議入りし、20日朝放送の報道番組ではTBS「サンデーモーニング」とNHK「日曜討論」が取り上げていた。
サンデーモーニングは、「教育と政治が問われる動き」として、沖縄県・竹富町の教科書問題から入った。同町を含む八重山地区の採択協議会が教科書無償措置法に基づき選定した育鵬社の中学校公民教科書を同町教育委員会は拒否し、東京書籍の中学校公民教科書を独自に購入して使っている。このため、17日に教育長の慶田盛安三氏が文部科学省から呼び出された。これを番組は文科省が「異例の是正要求」と呼んだ。
双方の主張として「違法状態を法治国家として解消するのは当然のこと」と述べる下村博文文科相と、「教育は中立性を保たなければいかんと言いながら、いま文科省は政治的介入じゃないか」と反発する慶田盛氏を放映。「議論は平行線」と説明したが、次の教委改革法案の話題につなぐナレーションで「教育現場に政治が関与する問題はこれだけではありません」と述べ、「教育委員会を首長の支配のもとに置こうとするものです」と共産党・宮本岳志衆院議員の衆院本会議の発言場面に移った。
この流れに響く「文科省が異例」「教育現場に政治が関与」「支配」などの言葉から、教育基本法10条(教育行政)を盾に教職員組合などが主張する「不当な支配」論が根底にある印象だ。
しかし、文科省は法律に定められたことを実行するため行政の仕事をしたまでとも言える。以下は竹富町が購入した教科書から。「国会が決めた法律や予算に基づいて、国の政治を行うことを行政といいます。……内閣はさまざまな仕事をしますが、最も重要なのは、行政の各部門の仕事を指揮監督し、法律で定められたことを実行することです」(東京書籍「新しい社会 公民」)。竹富町が異例なので教科書無償措置法に沿うよう行政が教科書通りの対応をしただけではないのか。
◆いじめが改革の発端
番組では、育鵬社教科書に反対するゼッケンやプラカードを持った人びとが映し出され、背景に政治運動があるのは一目瞭然だが、こちらには言及なし。その上、出演者のコメントは安倍政権への「国家主義」批判が続いた。司会の関口宏氏が「戦後レジームからの脱却の一つに含まれる感じがする」と教委改革について述べ、寺島実郎氏が「戦後レジームの脱却は戦後民主主義の否定に来るのではないか」などと米国側が不安視しているとコメント、金子勝慶応大学教授は「(八重山地区は)安倍さんに近い国家主義的な教科書を、法律を先行して採択した」と述べた。
こうなると、教委改革を「安倍政権=国家主義」批判の中で捉えたに等しく、竹富町の教科書問題から入った狙いもそこにありそうだ。
一方、教委改革法案をテーマに与野党各党の教育政策担当者が出席して議論したNHK「日曜討論」では、教育委員会制度改革の「きっかけとなったのは平成23年の大津市でのいじめ問題。深刻な事態を把握できなかった教育委員会の形骸化が指摘されました」とのナレーションで始まった。教育委員会見直し論議の発端は大津の中学生のいじめによる自殺事件だ。これがサンデーモーニングにかかると、視聴者は安倍政権が国家主義のため育鵬社の教科書を使わせようとして始めたと勘違いする。
◆岡山理大の魚に期待
大学でも教育論議が起きている。STAP細胞論文で渦中の小保方晴子博士をめぐる騒動から、フジテレビ「新報道2001」は、大学当局の「コピー・アンド・ペースト」(コピペ=ネット上の論文の文章をコピーして写してしまうなど)対策、論文代行業者に10万円ほどで卒論やリポートなどを依頼する有名大学の学生や准教授らの実態を示した。スタジオでの有識者らの論文コピペ論争などは学術界に警告を発したと言えよう。
コピペ問題という負の話題と対照的に大学で明るい話題だったのが、テレビ朝日「報道ステーションSUNDAY」の特集「マグロが砂漠を泳ぐ日 “魔法の水”が養殖を変える」。岡山理科大学工学部で山本俊政准教授が「魚類の家畜化」を目指して試みるクロマグロ、トラフグ、ニホンウナギなど海の魚を陸地設備の「好適環境水」で養殖する研究だ。「理大のさかな」として出荷の様子が紹介され、コペルニクス的発想で新産業創出につながることを期待したい。
(窪田伸雄)