対話できない大統領


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 米国のジョージWブッシュ元大統領は在任中、ホワイトハウス近くの個人邸宅を訪ねて民間人たちと会った。面談要請を全て消化できない場合、夜の時間を使ったわけだ。

 ビールを前に置いて対話する姿も見せた。2007年、ドイツでメルケル首相、英国のトニー・ブレア元首相、イタリアのロマーノ・プローディ元首相と対話しながら笑いこけた。ブッシュが飲んだのはノンアルコールのビールだったが、対話の媒介体になった。

 オバマ前大統領は非公式行事でハンバーガーとビールを注文した。最低賃金引き上げの時はホワイトハウスの北のデュポンサークルにあるシェイクシャックバーガー店に立ち寄って同地域の勤労者たちと対話した。2010年ワールドカップ南アフリカ大会を控えて、ブレア元首相とビール瓶をぶつけ合って賭けをした。

 ホワイトハウスで“ビール・サミット(首脳会議)”を主宰したこともある。09年7月、ローズガーデンで生ビールを置いて客人たちと対面した。ハーバード大の黒人教授ヘンリー・ルイス・ゲイツ氏が帰宅し開かなかったドアを壊して自宅に入るところを誰かに申告され、出動した警察官に逮捕された。白人の警察官が黒人の教授を逮捕したので、彼が白人だったら逮捕しただろうかと論争が起こった。事態が拡大して深刻になったので、大統領が両者を呼んでビール対話に及んだ。バイデン副大統領も同席して論争は鎮火した。

 文在寅大統領は大統領候補の時に「退勤途中に南大門市場に立ち寄って市民たちと一緒に焼酎を飲める大統領になる」と語った。就任の辞でも「退勤途中に市場に立ち寄って出会った市民と気さくに対話したい」と語った。現実は異なる。文大統領は17年7月、企業家たちを青瓦台(大統領府)に招待してビール会合を行った。ノーネクタイのスーツ姿で集まり、専門のシェフまで動員した。企業家と首席秘書官など20人がビールジョッキで乾杯したが虚心坦懐に話ができたのかは疑問だ。

 朴元淳ソウル市長が今月7日、イスラエル訪問中の記者懇談会で「(文大統領が)個別に『ビール1杯飲もう』と呼んでくれればいいのに」と語った。青瓦台での国務会議に出席はするが大統領と対話する機会がないというのだ。ソウル市長ですら大統領と対話する機会がないというのだから、他は言うまでもあるまい。

(5月15日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。