アルバイト風景


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 数年前のことだ。大学に入った息子が家の前のチキン店で働き始めた。1週間に4日、1日7時間のアルバイトだ。仕事がある日は夜の12時を過ぎて帰ってきた。疲れているはずなのに表情はいつも明るかった。大学入試の勉強にうんざりしていた以前とは違った。

 こんな考えが浮かんだ。「勉強が嫌いな子供には勉強を強要してはならない」

 戦争するように勉強した下の娘も大学に合格した後、アルバイトをした。家の前のポテトフライ店に駆け込んだ。「時給が高い家庭教師をすればいいのに、どうして骨が折れる仕事をするんだ」と尋ねた。家庭教師は時給2万ウォン台の中ほどか後半だが、ポテトフライの店は6000ウォン台の中ほどだ。もちろん家庭教師のバイトもしたが、ポテトフライ店の仕事がもっと好きなんだとか。その店は週末だけ勤めた。

 深夜に帰宅した2人の子供たちの話は同じだった。「うちの社長(店主)は本当に大好き!」。どれほど好きなのか、互いに自慢しあった。商売が上がったりの日には店主のことを心配した。“いい人”に出会ったおかげで一生懸命に働き、そんな子供に店主は時々ボーナスをくれたり、残った食べ物も持ち帰らせてくれる。どれだけ喜んでいるのかは、目つきだけ見ても分かった。

 昨年1月、あるキムパプ店に入った青瓦台(大統領府)の張夏成・前政策室長に従業員がこう話した。「商売がうまくいっていさえすれば、賃金を上げても気持ちが楽ですよ」。10人のうち8、9人は同じ心のはずだ。2人の子供も同じ心配をしていた。

 近ごろの風景は少し違うようだ。入試シーズンが終わると、コンビニやチキン店にどっと押しかけてバイトを探した学生たち。ところが今はレジを打つ年配の人がぐんと増えた。十中八九、店主だが、表情は明るくない。客を迎える明るい微笑(ほほえ)みはほとんど見られない。アルバイト学生も変わらない。店主は売り上げを心配し、アルバイト学生は店主の顔色をうかがっているのか。最低賃金を再び大きく引き上げた後、いつも見る日常の自画像だ。

 ポータルサイト「アルバイト天国」が行ったアンケートで、小商工人の2人に1人は「アルバイト学生を減らした」と答えた。10人中8人は週休手当の負担を減らすために“分散アルバイト”を実行しているか、実行する計画だと回答した。そうしなければ、最低賃金が優に1万ウォンを超えるので…。

 ふと、こんな考えがよぎった。「人々は幸せだろうか」(1月21日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。