政治家の出版記念会


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 本を売り買いするのだが、納得できない場面が繰り広げられる。本を買う人たちが本の内容には全く関心がない。予(あらかじ)め準備した白い封筒に入れた現金を手渡して本だけもらっていく。誰も本の値段は尋ねない。政治家の出版記念会の話だ。

 政治家の出版記念会の制度が改善される契機があるにはあった。2014年、新政治民主連合(15年末に共に民主党に党名変更)の辛鶴用議員は前年に開かれた出版記念会で韓国幼稚園総連合会(韓幼総)から数千万ウォンを受け取り、検察の捜査線上に浮上した。

 検察は、辛氏が幼児教育法改正案など特恵性の高い法案を発議する代価として韓幼総から組織的に金銭を受け取ったとみて起訴した。昨年7月に大法院(最高裁に相当)は辛氏に実刑を宣告した。出版記念会の後援金を賄賂と認めた最初の事例だった。

 辛議員の事件を契機に第19代国会(12年5月~16年5月)で「出版記念会を法的に規制しよう」という声が出たが、空念仏に終わった。図書を定価で販売する法案、出版記念会自体を廃止する法案などが出されたが、うやむやになった。15年、カード決済端末まで動員した盧英敏・新政治民主連合議員の詩集強制販売疑惑の時もさまざまな補完策が論じられたが、すぐに姿を消した。今も出版記念会と関連した法的な規制は「選挙90日前から禁止」が唯一だ。

 6・13地方選挙を控えて立候補予定者の出版記念会が堰(せき)を切ったように開かれている。選挙前に自身の広報を行いつつ選挙資金を集めるのに、これほどいい機会はない。出版記念会は慶弔事に分類され、政治資金法に伴う制裁は受けない。募金限度についての規制もなく、募金内容を公開する義務もない。

 昨年、請託禁止法が施行され、出馬を控えた公職者は1回100万ウォン、年間300万ウォンに後援金の金額が制限されるが、正当な“本代”として支払われたのであれば、ここから除外される。市中の図書価格より高い金額を渡しても、これを不法と見なして処罰することは容易ではない。

 このように制度に抜け穴が多いので、いろいろな小細工がはびこる。事実上、陰の政治資金を募金する通路に転落したのが政治版の出版記念会だ。こんな旧態と弊習をどのようにして追放すればいいのか。政治家退出運動でもしなければという声が出るほど出版記念会に対する批判の世論が高まっている。

 (3月6日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。