卒業式アローン
昔の大学の卒業式は、卒業生の家族と近い親戚が皆集まる大きな行事だった。花束と写真のアルバムを贈った後、一緒に写真を撮って祝う場所だった。皆に学士帽とガウンを着せて恩徳を称えることも忘れなかった。卒業式が終わると近くの食堂に押しかけて笑い、騒いだ。大学の卒業生たちの前に職場が待ち受けていた良き時代の話だ。
大学の卒業式のシーズン(韓国の学校の年度は3月―翌年2月)だが、卒業式の文化が大きく変化したことを痛感させられる。卒業式の会場のあちこちの席が空いている。一部は卒業式の前に学校に来て、学士帽とガウンを借り着して自撮り棒で写真を撮るのだという。家族を呼ばず、自分だけが卒業式に出席する場合も多い。それこそ“卒業式アローン”だ。
ある就職関連のポータルサイトが調査した結果、2月に大学を卒業する予定者のうち30%が「卒業式に出席しない」と答えたという。かなりの数が就職できないことを理由に挙げている。周りの人たちに恥ずかしくて、家族に対する面目も立たないので出席しないというのだ。大学の卒業は他人に依存せずに独立して生きていかなければならないことを意味するが、そんな状況になっていない。学費のローンがたくさん残っているのに、どうしようもない。
今年は大学の卒業生の就職難が非常に厳しい。“就職氷河期”という言葉がはやっている。入学生が一番多かった2010~14年入学の学生が卒業する今年から3年間、4年制大学の卒業生が史上最大規模となる見通しだ。その半面、経済難のため雇用市場は凍り付いている。雇用労働部(部は省に相当)によると、昨年の第4四半期と今年の第1四半期に従業員300人以上の大企業が計画している採用人員は前年比8・8%減の3万人に過ぎない。
社会人としての第一歩を踏み出す瞬間だが、当面仕事にありつけない未就業の卒業生にとっては、「卒業は新しい出発」という型通りの文句が胸にしっくりこない。社会に入り込む場所がないので、希望やときめきもない。行くところと言えば、図書館や国家試験を準備する安い下宿だけだ。
卒業式が憂鬱(ゆううつ)な祝宴に転落してしまった。私たちの時代の悲しい自画像だ。とはいっても、いつまでも肩を落としてはかりではいられない。英国の政治家ウィンストン・チャーチルのオックスフォード大学卒業式での祝辞を聞いてほしい。たったふた言だ。「放棄するな。絶対に放棄するな」。
(2月25日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。