サラリーマンのロマン


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 いい職場の条件は? 三つ挙げることができるだろう。分厚い月給袋、少ない労働時間、意義深い仕事。こんな会社なら命懸けで働くぞという人がたくさんいるはずだ。サラリーマンのロマンだが、現実は異なる。薄い月給袋、多い労働時間、あれやれこれやれと言われ、何でも手当たり次第にやらなければならない仕事。オナーのロマンだ。

 「夢は夢にすぎない」。サラリーマンの10人に9人はこんなことを考えながら出勤している。

 本当に夢にすぎないのだろうか。ヤフージャパンがサラリーマンのロマンを実現すると名乗りを上げた。宮坂学社長が「週4日勤務制を実施する」と宣言したのだ。ヤフージャパンのカレンダーは「月火水木日日日」に変わった。賃金を減らすわけでもない。日本のユニクロを傘下にもつファーストリテイリング社のように勤務時間を10時間に増やすわけでもない。

 宮坂社長はなぜこんな選択を行ったのか。「優秀な人材を確保するため」だという。その言葉に込められたもっと深い意味は何だろうか。経済学者ヴィルフレド・パレートの「80対20の法則」。80%の結果は20%が作り出すという仮説だ。群集生活をするアリやミツバチの社会でも10匹のうち2匹だけ熱心に働くという。怠惰なアリやミツバチが大多数だ。人間の社会といってもそんなに変わるはずはない。

 週4日勤務になれば、20%の行動はどう変わるか。「遊べるぞ」といって昼夜の別なく遊びほうけるだろうか。そんなはずはない。競争の場に閉じ込められた頭脳は休日に知識を蓄積して、より多くのアイデアを生み出すはずだ。落ちこぼれないように、もっと多くの年俸を手にするために…。残る80%の変化の一つ。賃金引き上げ要求に口をつぐまざるを得ない。第4次産業革命時代の新しいパラダイムだ。

 わが国に週4日勤務制を導入する場合は、心配の方が先立つ。公企業と公務員が先頭に立つと言い出すだろうから。週5日勤務制の時も、定年を60歳に延長する時も、公企業と公務員が真っ先に導入した。そのくせ、多く働く人の賃金を高くしようという制度改革には真っ先に反対する。“市民の足”である鉄道と地下鉄まで連帯ストを行うありさまだ。

 すし詰め状態の地下鉄に乗ったサラリーマンは何というだろうか。「何がロマンだ、そんな制度を導入したら大変なことになる」。20%がくつろげる空間はどこにあるのだろうか。

 (9月28日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。