水害復旧より核実験断行した金正恩氏


韓国紙セゲイルボ

「政権のための国民」浮き彫り

 咸鏡北道地方が大洪水に見舞われ、死者行方不明者約500人、被災者16万人が発生した。北朝鮮は国連傘下の国際救護団体をはじめとする国際社会に援助を要請した。

 一方で北朝鮮は「大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射してあまりあるほどの推進力を持った新型エンジン性能試験に成功した」と主張し9枚の写真まで公開した。

 厚顔にも北朝鮮は国際社会に助けを要請しながら、その国際社会に向かって挑発も行った。写真の中には金正恩(キムジョンウン)が豪快に笑う姿もあった。笑い背後に洪水で苦しむ住民の顔がちらつく。

 洪水から20日余り経(た)っても金正恩は水害現場を訪ねていない。その代わり金正恩は軍部隊傘下の農場を訪問したり、酸素工場を現地指導した。ここでも豪快に笑いまくった。

 水害は8月末に起った。5回目の核実験は9月9日だった。金正恩は水害復旧の代わりに核実験を断行したわけだ。正常な国家の正常な指導者ならば、全てのものを後にして水害現場を訪ね、住民を慰めて国家的次元で支援をしなければならなかった。

 しかし、それは正常な国家で正常な指導者を選出した民主主義国家で暮らす人々の錯覚だった。金正恩の頭の中に北住民の安全、福祉、人権は最初からない。金正恩政権の生存のために住民が存在すると考える。だから水害現場に関心がない。如何に多くの住民が死のうが行方不明になろうが関心がない。核保有国になって、世の中に号令する日がすぐに来るということが彼の笑いの中からにじみ出る。

 金正恩が10月10日労働党創建日を前後してICBMを試験発射するならば、米国の対北朝鮮態度は完全に変わるだろう。米国は軍事的オプションを検討したり、北朝鮮に対して交渉を提案するかもしれない。しかし、米国の軍事的オプションは1993年にもそうだったように、韓国が北朝鮮の人質となっている限り、選択できないだろう。

 それなら残っているのは一つしかない。米朝平和協定締結だ。金正恩は米国と平和協定を締結して在韓米軍を撤収せよと要求するだろう。核・経済並進路線が指向する中間目標だ。

 こうしたシナリオが現実化される前に、金正恩を退陣させなければならない。国連安保理は強力な制裁案を用意しなければならないだろう。給料の大部分を忠誠資金として捧(ささ)げながら、深刻な人権侵害にあっている北朝鮮労働者の送出問題も制限しなければならないだろう。核とミサイル開発に転用可能な材料を北朝鮮と取り引きした中国遼寧省の鴻祥グループに対して米国と中国が協力したことは示唆するところが大きい。

(キム・ヨルス誠信女子大教授・国際政治学、9月24日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。