ドーピング告発者はユダ?


地球だより

 リオ五輪もたけなわだが、ロシアはドーピングスキャンダルに揺れ続けている。事の発端は、陸上の元ロシア代表ユリア・ステパノワ選手の、ロシアが組織的にドーピングを行っているという告発だった。

 その後、ロシアのドーピング検査機関元所長のグリゴリー・ロドチェンコフ氏が実態を証言し、世界反ドーピング機関(WADA)が、ロシア全選手のリオ五輪への参加禁止を国際五輪委員会(IOC)に勧告。しかしその後、IOCは一転し、条件付きでロシア選手の出場を認める決定を行った。

 これで、ロシアの選手がリオ五輪に出場できるようになった。ロシア国内は歓迎ムードかというと、ちょっと違うのである。

 プーチン大統領が「これはスポーツへの政治的干渉だ」と主張しているように、ドーピングの罪悪を話し合うのではなく、「欧米による陰謀であり、ロシアいじめだ」と捉えている人たちが実に多いのだ。

 可哀想なのは「子供たちの将来のために」と勇気を出して、告発したステパノワ選手。「ユダ(裏切り者)」のレッテルを貼られ、ロシア社会からつまはじきにされている。

 ロシアにはスポーツの才能や体力・体格に優れた選手が大勢いる。ドーピングなどしなくても、実力で金メダルを取れるだろう。「スポーツへの政治的干渉」を、ロシアはいつまで続けるのか。

(N)