情報心理戦に揺れる韓国

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 韓国では今、サード(THAAD=高高度防衛ミサイル)配備の賛否をめぐる激しい論争が国論を分裂させている。サードは防御兵器であるにもかかわらず、中国と北朝鮮が猛反発して韓国民の反対世論を煽っている。

 中国はサード運用のためのレーダーが中国監視のために使われるを恐れているが、同レーダーの探知距離は600㌔にすぎない。

 また、サードは射高が150㌔で、射程3000㌔の準中距離ミサイルしか迎撃出来ないが、イージス艦搭載のSM3ミサイルは射高が500㌔~1000㌔(改良型)で、射程5000㌔以上の大陸間弾道ミサイルを迎撃出来る。SM3でなくことさらサードに目くじらを立てるのも理に合わない。

 にもかかわらず中国が北朝鮮と共に猛反発する背景にはサード配備を阻止することによって日米韓の相互同盟関係を壊したいという狙いがある。そのため、サード配備反対の世論を煽りながら韓国の国論分裂を画策している。

 なかでも北朝鮮は韓国人、日本人に成り済ましたサイバー戦士たちが高度な情報心理戦を巧みに行っている。韓国と日本の純朴な人々はそのような北朝鮮の術中に着実にはまりつつある。

 2008年に韓国では政府が輸入する米国産牛肉が狂牛病に感染したという噂が広がり大掛かりな反米、反政府デモが発生した。

 その背景にあったのは親北左派が反米デモを煽るためにわざと流したデマだった。親北左派の若者を教唆したのが韓国人に成り済ました北朝鮮のサイバー戦士だったと筆者は考えている。

 当時、反米、反政府デモにベビーカーを持って参加した若い主婦たちは現在、米国産の牛肉が世界一衛生的かつ安全だといって米国産の牛肉だけを求めている。

 中国は国境紛争中のインドを牽制するため、パキスタンの核武装を容認した。さらに、韓国、日本、米国の同盟関係を牽制するため、北朝鮮の核武装も容認した。言わば「暗黙の了解」である。

 韓国が生き延びる安保戦略は「米韓同盟」と「日米同盟」の強化である。遠い強大国と同盟して隣の強大国を牽制する「遠交近攻」と「勢力均衡」は歴史の教訓であり「外交・安保の必然」でもある。

(拓殖大学客員研究員・韓国統一振興院専任教授)