ダーチャの季節
地球だより
初夏を迎えた古都サンクトペテルブルクを、多くの観光客が訪れる。白夜の季節。夜中も夕焼けのように明るい空が美しい。
観光客が都心部などの歴史的地区を訪れる一方、市民たちは週末になると、郊外の別荘に足を運ぶ。筆者も先日、サンクトペテルブルクの西、フィンランド湾に面した閑静な地域にある友人の別荘を訪れた。
近くには、ピョートル大帝が築いた夏の宮殿(ペテルゴフ)や、プーチン大統領の旧別荘もある。ロシアの別荘文化発祥の地といえる。
ロシアの「別荘」は2種類ある。その多くは「ダーチャ」と呼ばれ、家庭菜園付きの小屋というイメージだ。炊事は井戸水を使い、トイレも汲(く)み取り式が多い。電気がないダーチャもある。
しかし近年は、「コテージ」と呼ばれる欧米風の豪華な別荘が増えてきた。富裕層の中には、市内にある家を売却して郊外のコテージに移り住む人も多い。
筆者の友人も、芝生の庭とサウナに憧れ、コテージをローンで購入した。手入れされた庭でのバーベキューは、最高の贅沢(ぜいたく)だ。
ロシア人は土いじりが大好き。ソ連時代や、ソ連崩壊後の混乱期には、人々がダーチャでせっせとジャガイモや野菜を育て、食料を自給することで困難を乗り越えてきた。今でもダーチャで育てる野菜は、年金生活者や、収入の低い人々の生活を支えている。
白夜のコテージにたたずみながら、ロシアの歴史に思いをはせる。ソ連崩壊から四半世紀。この国の変化は著しい。
(N)