順命と運命
韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」
2011年6月、民主党の孫鶴圭代表は慶州で韓国新聞放送編集人協会主管の討論会を行った。気が重い試験を終えてすっきりしたのか、参加者との晩餐ではテーブルを回って爆弾酒(ビール割ウイスキー)を飲んだ。一部の親しい記者とは宿所の2次会でまた飲んだ。
孫代表はさまざまな分野の具体的な政策を真摯に説明した。“政権の青写真”をこっそり聞かせたわけだ。2カ月前の4・27再・補欠選で勝利し元気一杯の彼は、12年の大統領選挙も希望的と感じていたのだろう。酒がまわると興に乗って夫人のための歌まで歌った。彼の政治遍歴の中でバラ色の時期だった。
孫代表が12年の総選挙・大統領選挙を控えて野党在野の大統合を推進したのは、結果的に自分の首を絞める敗着だった。在野で臥薪嘗胆していた親盧(武鉉)勢力がすっと入ってきて党の主導権を掌握し、大統領候補の座も手中に収めた。孫元顧問は14年の7・30再・補欠選で落選し政界を引退しなければならなかった。
最近、共に民主党(旧、新政治民主連合)の最高委員懇談会で「孫鶴圭投入論」が論議されたという。孫元顧問に選対委員長になってもらい、党の内紛を解決しようという内容だ。“第2の盧武鉉”を夢見る金富謙前議員は「また“焚き付け”の役割をしろというのは、破廉恥なこと」だと一喝した。破廉恥は親盧勢力に付きまとう言葉だ。配慮・常識が欠けた自己中心・純血主義と通じるためだ。
金大中(DJ)元大統領の“分身”権魯甲常任顧問が昨日、共に民主党指導部の閉鎖的な運営と排他性、“親盧覇権”を叱咤し離党した。「分裂を防ごうと渾身(こんしん)の力を注いだが、だめだった…」。
彼が14年に出版した回顧録のタイトルは『順命』だ。DJ政権時の00年、与党刷新派の第2線退陣要求によって、最高委員の座を退いた時に残した言葉からとった。15年後、86歳の老政治家となった彼は、文在寅代表に最後まで「順命」を訴えたが、拒否された。60余年の政治人生で初めて所属する党を離れる日、見送る指導部は誰もいなかった。
文代表が12年に出版した自叙伝は『運命』だ。彼は「(盧武鉉)大統領は遺書で『運命だ』と言った。あなたが残した宿題で身動きできなくなった」と記した。その宿題が何なのかは知らないが、文代表にとっては湖南(光州・全羅南北道)を象徴するDJ勢力と党の命運より重要であるようだ。順命と運命のどちらが正しいのだろうか。
(1月12日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。