ぶっきらぼうと深い人情
地球だより
モスクワを訪れた出張者らに話を聞くと、やはりロシアの評判は芳しくない。空港でも駅でもどこでも職員の態度がでかいとか、面会相手が時間を守らないとか。
以前に比べれば随分良くなったと思うが、筆者もあえてそれは否定しない。ただ、ロシア人の名誉のために付け加えれば、ここでは日本とは違い、初対面の人に笑顔で接する習慣がないのだ。あまりニコニコしていると、何か思惑があるのではと警戒されてしまう。
所用でロシアに立ち寄り、短い時間だけを過ごすならば、ロシア人たちの表面的な、ぶっきらぼうな部分だけが印象に残ってしまう。でも、しばらくロシアに住み、ロシアの友人と心を開いて交流すれば、彼らの深い人情に触れることができる。
赴任地がモスクワからラトビアのリガに変わり、出発の日になった。雪が舞うクリスマスの夜。筆者を見送るため、友人や教え子たちが駅に集まってくれた。警笛が鳴り列車が動き出した。手動で開閉する乗車扉は、車掌がホームの安全を確認するため開いたまま。そこに立つ筆者を追いかけ、彼らは手を振りながらホームの端まで走り続けた。ドラマの一場面のような体験だった。
日本と比べれば何かと不便だし、窓口のおばちゃんの態度はでかい。待ち合わせの時間も、守られることのほうが珍しい。でも、ロシアにはそれ以上の魅力がある。ロシアの一番の魅力は人だと、筆者は答えたい。
(N)