見知らぬ人に挨拶すると
地球だより
5月9日はロシアで最も重要な祝日の一つ、対ドイツ戦勝記念日だ。筆者は仕事柄移動が多い。この日も長距離バスでエストニアからロシアに向かい、国境に差し掛かった。
幾度となく同じ検問所を通るので、顔を覚えていた警備のロシア人係官につい「元気?戦勝記念日おめでとう」と声を掛けてしまった。それで入国審査官からスパイ疑惑を掛けられる羽目に。
パスポートにスタンプを押す場所が無いほど、旧ソ連圏の国々を行き来していることも、「スパイ容疑」を増幅させた。別室に呼ばれ、ウクライナに行った理由などを聴取された。
なんでも、対独戦勝記念日を狙ったテロ対策で、警戒態勢が上がっているという。一般の外国人旅行者なら飛行機で移動するところを、陸路で国境を越え、それもしょっちゅう行き来している。西側のスパイではと、疑う気持ちも理解できる。
ロシアでは普通、下心がない限り見知らぬ人に気軽に挨拶はしない。ただ、顔見知りの近所の人に挨拶すると、これはこれで大変。挨拶ついでに相手が世間話を始めてしまったら、いつまでも話し続ける。
入国管理官はスパイ疑惑で聴取を始めたはずなのだが、だんだんと話がそれてゆく。なんでオレは祝日にまで働かなければいけないんだと、愚痴をたっぷり聞かされて、問題なく解放された。ありがたいことにバスは私を待っていてくれた。これで戦勝記念式典の見物に間に合う。
(N)