徹底できないコロナ対策ーフランスから


地球だより

新型コロナウイルス

 クリスマス休暇をロンドンで過ごすため、一流ホテルの宿泊を2週間予約していた友人の建築家ポワリエ夫妻は旅行を断念した。英国で新型コロナウイルスの1日の新規感染者が9万人に迫る勢いを受け、フランス政府が仏英の往来を原則禁止したからだ。

 そのフランスも感染者の急増が止まらない。フランスには有事の際の国民の自由を制限する法律もあり罰則を伴った外出禁止令も数度発出した。マスク着用義務化でも違反者に罰金を科し医療及び介護関係者のワクチン接種を義務化、ワクチン接種やPCR検査の結果を表示できる衛生パスも普及している。

 にもかかわらず、感染拡大が止まらない。公衆衛生対策の十分ではないアフリカや中東との往来が絶えず、欧州連合(EU)域内に入ってきた人々の移動が自由なため、人がウイルスを運んで来ることを防ぎ切れないという事情もある。

 最近、パリ・モンパルナス駅から高速鉄道TGVを利用したが、駅構内で係官から衛生パス提示が求められ、確認が済むと緑の紙テープが手首に巻かれた。ところが、中にはワクチン接種拒否者もいて、係官に抗議する場面にも遭遇した。さらに列車の出発が迫り、ホームに利用者が殺到するとチェックも途中で辞めた。

 PCRの検査機関に行った際も、衛生パス提示を求められなかった。検査所内の密状態は避けられていたが、建物の外で待たされる人たちは密状態。カフェやレストランも同様で衛生パス提示が義務付けられているが、店員が面倒くさがってチェックしない店は少なくない。店側もチェック義務を怠れば罰金を払わされるのに、見つからなければいいという態度だ。(A)