改名ブーム
韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」
名前に対する韓国人の関心は格別だ。名前で吉凶禍福を占う姓名学の影響が大きい。朝鮮時代には大逆罪人と名前が同じなら、門中会議(氏族の長老会議)を開いて改名したという。それでも足らず、紙に名前を書いて燃やしたり、土に埋める風習もあった。
乳児死亡率が50%を超える時代には「悪名為福 賤名長寿」という俗説のため、悪く賤(いや)しい幼名を付けることが流行だった。朝鮮第26代王の高宗は幼い頃、「ケトン(犬の糞〈くそ〉)」と呼ばれ、(朝鮮前期の名臣)黄喜政丞(=丞相)の幼名は「トヤジ(豚)」だった。
しかし易学的な観点でみると、人間の運命を決定する要素のうち、名前の割合はあまり大きくないそうだ。四柱八字(生まれた年月日時の干支8文字)と風水地理(先祖の墓や本人の生家の地理や地名)がそれぞれ35%で、名前は観相と同じ15%程度だという本もある。どうせ検証不可能なので、信じるか信じないかは本人次第だが。
1年間に改名を申請する人が16万人を超えるという。まさしく改名ブームだ。一昨日、大法院(最高裁に相当)が過去20年間に改名を許可した12の類型を発表した。発音と意味が悪かったり、笑いものになる場合が特に多かった。
キム・チグク(キムチ汁と同じ発音)、キョン・ウンギ(耕運機と同じ発音)、ソン・アジ(子牛と同じ発音)など、いずれも聞いた人を大爆笑させる名前だ。本人はどんな顔なのかと、まじまじと見詰め直してしまいそうだ。本人たちはどれだけつらかっただろうか。改名申請する理由がよく分かるというものだ。
20年前だけをみても改名は本当に難しかった。裁判所が犯罪に悪用される恐れや社会の混乱などを理由に許可を渋った。大法院が1995年に初等学校児童改名許可の処理指針を定め、2005年に姓名権を憲法上の幸福追求権と人格権の一つの内容と認める判例を出した後に、やっと大衆化した。
名前は父母が子供に与える最初の精神的な贈り物だ。誰もが持つ「生涯の符籍(お守り)」ともいわれる。とはいえ、子供が自分が選びもしない名前のせいで、心に傷を負って生きていかなければならないとしたら、それはむごいことだ。だからこそ、父母はよく考えて美しく、意義深い名前を付けるべきだ。
いい名前を持つことはもちろん重要だ。しかし、もっと重要なのは立派な名前にふさわしい価値ある人生を送ることではないだろうか。
(3月11日付)