水は苦労して手に入れろ?ー韓国から


地球だより

 こちらにも本格的な暑さが到来した。この時期、日本と同じように熱中症で救急搬送される事故も起きていて、天気予報では普段より多めに、細目に水分を摂取するよう呼び掛けている。かつて日本では安全保障に無頓着な人たちをたしなめる意味で「水と空気と安保をタダと勘違いしないで!」と言ったものだが、韓国では北朝鮮と軍事境界線で対峙するため安保には巨額の国防費がかかり、水もタダという感覚では決してない。

 以前、筆者が住んでいたソウル市内にあるマンションの裏山には地下水から湧き出る水の汲み場があって、持って来た20リットル入りウォータータンクにその湧き水をいっぱい入れ、キャリーカートでせっせと自宅まで持ち帰る住人をよく見掛けたものだ。それを一回り小さい容器に移し替え、冷蔵庫で冷やしてから飲んだり、料理に使うのだ。

 もっと本格的なものになると山中にある「薬水場」と呼ばれる湧き水の汲み場がある。体にいいとされる各種鉱物性物質を含んだ泉が湧く場所が全国至るところに点在していて、「あそこの薬水場は体にいいそうだ」といううわさを聞きつけると、多少遠くても車でその水を汲みに出掛ける人がたくさんいる。満杯のウォータータンクをトランクに6、7個積めば、帰り道は車体後部が地面すれすれに付きそうなくらい下がる車もある。

 今は各世帯に引かれた水道水の質も良くなり、メーカーのミネラルウォーターも普及しているが、苦労して運んで来た水にはかなわないようだ。

(U)