大統領の息子の自慢


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 (朝鮮時代に)郡守まで務めた土亭李之★(イジハム)(土亭は号)は家族の生計のため川で魚を釣っていた。ある日、彼の娘が父が釣った魚を市場に出して売った。娘は母にお金を見せながら、「父より2倍も高い値段で魚を売った」と自慢した。その言葉に母親はとても驚いて言った。「お父さんが知ったら大変なことを言うのね。すぐに魚を買った人たちを捜してお金の半分を返しなさい」。土亭はそれまで貧しい民もお金の心配をしないで魚を食べられるように、わざと半分の値段で売っていたのだ。

 朝鮮時代の戸曹(国家財政・戸籍などを担当する中央官庁)書吏(下級役人)、金壽彭(キムスペン)が弟の家の庭に甕(かめ)が並んでいるのを見て尋ねた。宣恵庁(特産物の代わりにコメを納めるようにした制度を施行す機関)の官吏である弟は「俸禄が少なく、家内が副業として染色をしている」と答えた。「お前は食事もできない民を見たことがないのか。国の禄を食むわれわれがこんな事をすれば、彼らは何をして暮らせというのか」。兄はこう怒鳴って甕を全部壊してしまった。

 中国の魯の宰相である公儀休の食膳に野菜一皿が上った。味がとてもいいので、下女にどこから持ってきた野菜なのか尋ねた。「大監(高級官吏の尊称)様の畑で私たちが育てたものです」。彼はすぐに菜園を掘り返すよう指示した。下人たちは野菜がまずくてそうしたのだと思った。しばらくして、公儀休は母屋で機を織る下女を見掛けた。一目で腕前が非常に優れていることが分かった。彼はその下女を追い出して機を燃やした。人々がその理由を訊くと、彼はこう答えた。「俸禄をいただく宰相まで利益を求めれば、農夫や機を織る女性たちは、どこで彼らの品物を売ればいいというのか」

 文在寅大統領の長男、ジュンヨン氏の支援金選定論議が熱を帯びている。彼は最近、政府支援金6900万ウォンをもらうようになると「お祝いされるべきことであり、自慢してもいいこと」だとフェイスブックに投稿した。今回の芸術関連の公募事業に申請した417件のうち、文氏のような巨額な支援を受けるケースは15件だけだという。この知らせが伝わると、「高血圧の薬を飲まなければ」という嘲弄があふれた。権力をバックにした人間が国の援助をもらえば、力なく貧しい芸術家たちは追い出されるしかない。地下に眠る土亭が飛び起きるような、本当に廉恥のないことだ。

 (6月23日付)

★=くさがんむりに函

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。