夫唱婦随
鉄鋼王アンドリュー・カーネギーは 1901年、生涯築き上げた鉄鋼会社を処分して受け取った3億2465万㌦を慈善と寄付に使った。米国の富豪たちの寄付の伝統は彼が蒔いた種の結実であるわけだ。「金持ちとして死ぬことが一番恥ずかしいこと」という言葉に、分かち合いの生活を選択した彼の人生哲学が溶け込んでいる。
ある時、ニューヨーク・フィルハーモニックの職員が訪ねてきて6万㌦の後援を頼むと、彼は3万㌦を工面してくれば残りを埋めてあげようと約束した。間もなく、その職員が3万㌦を工面して,再び訪ねてきた。「後援者を言ってもらえるかな」。カーネギーが尋ねると職員は答えた。「カーネギー夫人です」。彼の慈善に夫人の役割が大きかったことを示すエピソードだ。
1895年、エックス線を発見したドイツの物理学者ウィルヘルム・レントゲンに悩みが生まれた。志願者がいなくて撮影実験ができずにいたのだ。エックス線放出量の調節に失敗すれば、強い放射線を浴びることになるので、断ろうとするのは当然だった。結局、最初の撮影に「左手」を差し出したのは妻のアンナ・ベルタだった。夫唱婦随の代表的な例だ。
KAIST(韓国科学技術院)に515億ウォンを寄付した鄭文述・前未来産業会長夫妻の例も見逃せない。鄭前会長の回顧録の内容だ。「ある日、妻が使途を明かさないで5億ウォンほしいと言った。1カ月ほど後、妻に来た郵便物を偶然発見した。妻が匿名で寄付したそのお金で660人が白内障の手術を受けたという盲人宣教事業関係者の感謝の手紙だった」。鄭前会長は妻を負ぶってあげたい気分だっただろう。
拍手される夫唱婦随だけではない。メキシコの悪名高い麻薬王ホアキン・グスマンは南米から米国に供給される麻薬の運搬ルートを牛耳っていた人物だ。2019年に米国の裁判所で終身刑を宣告され、収監中だ。彼の妻のコロネル・アイスプロが一昨日、コカイン、メタンフェタミン、マリファナなどの麻薬を米国に密輸した容疑で米司法当局に逮捕された。07年に32歳年上のグスマンと結婚した彼女は15年に夫の脱獄を積極的に支援した前歴もある。英国の歴史学者トーマス・フラーは「男性が持つ最高の財産、あるいは最悪の財産は自分の妻である」と言った。グスマンにとって妻はどんな存在だろうか。「やはり俺の妻」といって親指を立てるだろうか。
(2月24日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです