人口デッドクロス


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 1年間に、生まれる新生児の数より死亡者の数が多くなる現象を、“人口デッドクロス(dead cross)”という。人口が自然減少するデッドクロスが発生すれば、その次に待っているのは人口の急激な減少、つまり人口の絶壁だ。行政安全部(部は省に相当)が今月3日に発表した「2020年住民登録人口統計」によると、昨年の出生者は27万5815人で、死亡者は30万7764人と集計された。1年前より人口が約3万人も減少したわけだ。戦争をしているわけでもないのに人口のデッドクロスが発生するのは国にとって災難だ。国家運営においても万病の根源となるためだ。

 世界で人口が自然減少している国は日本、スペイン、ギリシャなど33カ国くらいだ。その中でも韓国は最も早く低出産と高齢化が進んでいる。わが国は2018年に世界でただ1カ国だけ合計特殊出生率が0人台(=1人未満=0・98人)を記録し、衝撃が広がった。新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われた昨年の第3四半期には同出生率が0・84人まで低下した。世界の平均(2・4人)や欧州連合の平均(1・59人)との差が大きすぎる。新型コロナの感染拡大によって若者たちが結婚と出産を先送りし、赤ちゃんの泣き声がさらに聞こえにくくなったわけだ。“大韓民国消滅論”まで出ている。

 人口高齢化の速度は世界で最も早い。65歳以上の人口比率が25年に20%、36年に30%、51年には40%を超える見通しだ。統計庁が発表した19年の将来人口推計を見ると、わが国の高齢者人口の比率は43年に36・40%まで上昇し、日本(36・35%)まで追い越すのだという。現在のような低出産・高齢化の趨勢(すうせい)が続いていけば、67年に老人が人口の半分を占める社会が到来するという悲観的な展望まで出ている。そうなれば、国家経済は気力を失うだろう。

 わが国より9年早く人口減少が始まった日本は、経済成長率が急落してデフレーションが起こり、“失われた20年”という沈滞期を経験した。人口の減少は国家の災難を予告するシグナルだ。人口のデッドクロスが現れた国家は、経済、生活、保健、未来戦略など、社会のあらゆる分野で総体的な危機を迎えるようになる。

 そのような国家の存立自体が脅かされる深刻な状況であるにもかかわらず、政府の危機感は途方もなく低い。それは国家の将来を台無しにして、青年世代に対して罪を犯すことだ。

 (1月6日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。