季節感を取り戻した新年ーフィリピンから


地球だより

 フィリピンの新年は、悪霊を追い払うため派手な花火や爆竹の爆音とともに迎える風習がある。しかし今年は、感染対策により多くの自治体が花火禁止を打ち出した。今回はさぞかし静かな異例の年越しになると思っていたが、実際のところは違った。大晦日(みそか)に午前0時が近づくと例年ほどではないが派手に花火を打ち上げる連中や、クラクションを鳴らしながら走り回るバイクなど、それなりに賑(にぎ)やかさが戻った感じだった。

 感染対策で禁止されているはずのカラオケもあちこちから聞こえてくる。地方自治体が取り締まっている様子もなく、完全に建て前と化しているようだ。たぶん新年くらいは大目に見ているのだろう。政府が警戒を強めたこともあり、フィリピンで1年を通して最も盛り上がるはずのクリスマスはパーティーなどの集まりを禁じられ、多くの人々が欲求不満を感じていたことは間違いない。それが新年に爆発したという雰囲気だった。

 昨年3月に始まった長期のロックダウンは、季節を彩るお祭りやイベントなどをすべて奪ってしまった。年中同じ服装で済む南国ではもともと季節感は希薄だが、ステイホームの習慣が変化なき生活に輪を掛けた。

 以前は毎年繰り返される迷惑な騒音イベントくらいにしか感じなかったが、今回は花火の爆音で久しぶりに季節の節目を感じることができた。

(F)