防弾政権


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 防弾!人の生命を救うために飛んでくる銃弾を防ぐというのだから、これ以上いい言葉はないように思える。7年前、この言葉を世の中に堂々と叫んだ若者たちがいる。7人の青年で構成された「防弾少年団(BTS)」だ。聞きなれず、ぎこちない名前だったが、その目的は星のようにはっきりしていた。銃弾を防ぐ防弾のように、同年代の青年たちに加えられた偏見と抑圧を払いのけて、自分たちの音楽と価値を守り抜こうということだ。

 そんなわけで彼らの歌詞には、人々に温かいねぎらいの言葉をかける内容が多い。『小宇宙』という曲にはこんな歌詞が出てくる。「僕たちは輝いているんだ。それぞれの部屋、それぞれの星で」。

 美しい言葉も政界に入っていくと受難に遭うようだ。国会では最近、“防弾国会”論議の真っ最中だ。総選挙での会計不正などの疑いを受けている共に民主党、鄭正淳議員の逮捕同意案が国会に提出されたが、その後はなしのつぶてだ。174議席を誇る巨大与党が彼の頑丈な防弾チョッキの役割を果たしているためだ。

 国政監査では与党の議員たちが息子の“皇帝兵役”疑惑に巻き込まれた秋美愛法務長官(法相)を護衛兵のように擁護している。“防弾国監”との嘲弄(ちょうろう)が飛び交っている。“コロナ防弾”と言い訳しているが、保守団体の集会を封鎖するための“政権防弾”の疑念にかられる。

 今年574回目の誕生日を迎えるハングルのもともとの名前は「訓民正音」だ。民を教える“正しい音”という意味を持っている。ご存知のように、韓国語が(公式的に使用されていた)中国の漢字と違って互いに意味が通じない不便さを解消しようとして作ったのがハングルだ。

 ところが最近は、同じハングルを使いながらも互いに意思が通じない人たちが数えきれないほどいる。正音の“正しい音”は次第に薄まって、詭弁(きべん)の音が横行する世の中になった。心から問いたい。「(ハングルを創製した)世宗大王様、われわれの言葉はどうしてこんな有様なのですか」。

 BTSが歌っているように、星は夜が深まるほどいっそう玲瓏たる輝きを放つ。地上の星もそれと同じだ。真っ暗闇の夜に一人、一人が互いに光を投げ掛け合う時にいっそう輝くことができるのだ。七つの星が歌っている。「なんとまた、この夜の表情がこんなにも美しいのは、あの暗闇でも、月明かりでもなく、僕たちのせいなんだ」。

 (10月12日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。