19年の日本経済、難題に立ち向かう試練の年
波乱の幕開けである。2019年の日本経済は、新年初の株式取引である大発会で一時、日経平均株価が前年末比700円超安となる展開でスタート。昨年末の荒れたムードを引き継いだ形で、今年はどんな展開になるのか。
戦後最長の景気拡大を続ける日本経済だが、米中摩擦、世界経済の減速、10月の消費税増税などの懸念材料、難題にどう対処していくか、大きな試練の年になりそうである。
大発会で株価が大幅下落
大発会の日経平均株価は、前年末比452円安と大幅に続落し、2万円を割り込んで終了した。大発会での下落は3年ぶりで戦後3位の下落幅である。
米景気の減速懸念から米国株式市場で株価が乱高下するようになり、その流れを受け、日本でも下落する方向で動揺を繰り返していた。
今回の下落の直接のきっかけは、米IT大手アップルの業績の下方修正「アップル・ショック」である。アップル・ショックが意味するのは、一企業の業績問題にとどまらない。米経済全体の減速が「心配事から現実になってきた」と受け止められたからである。背景にあるのは、世界的な景気減速懸念と、先が見通せない米中貿易戦争である。景気の先行指標と言われる株価の急落は、各国の株式市場がそれを敏感に感じ取っているということであろう。
国内経済においては、周知のごとく、10月に消費税率を10%に引き上げる増税が予定されている。年々増大が見込まれる社会保障費の安定財源として、税率アップが欠かせないとみられているからである。
消費税増税はしかし、その一方で、消費に深刻な影響を与えるなど景気へのマイナス効果が小さくない。実施は基本的に慎重であるべきである。
政府は昨年末、一般会計で過去最大規模である101・4兆円の19年度予算案を決定。その中で、増税対策費として2兆円強を充てた。中小小売店でのキャッシュレス決済時に最大5%のポイントを還元する費用2798億円、低所得・子育て世帯向けの「プレミアム付き商品券」1723億円などである。
そのほか、19年度税制改正では、自動車や住宅を中心に減税措置を用意。また、食料品や新聞などを例外的に8%に据え置く軽減税率を初めて導入する。
前回14年度の消費税増税が、予想以上に消費の低迷を招いた経験から、19年度予算案、税制改正とも、消費税増税の実施に向けた環境整備に苦心した内容と言え、その努力は多としたいが、慢心は禁物である。
安倍晋三首相は年頭の記者会見で、今年を「全世代型社会保障元年」と位置付け、「医療、年金など社会保障制度全般にわたる改革の検討に入る」と述べたが、増税頼みに終わらず、有言実行に努めてもらいたい。
円高の動きも要注意
日本経済も、最近の指標では踊り場から景気後退入りが懸念される状況になってきている。期待される官製春闘による賃上げは、世界経済の減速などから環境的には厳しくなりそうである。最近のドル安円高の動きも要注意である。