日韓関係悪化、中朝の脅威拡大を招く


 日本と韓国は民主主義と市場経済という価値観を共有する隣国同士である。本来であれば独裁と核・ミサイル開発を続ける北朝鮮、覇権主義を強める中国がいずれも北東アジアの大いなる脅威になっている現実を直視し、結束してその脅威を取り除くべき準同盟国だ。

 ところが、韓国の文在寅政権は中朝とは融和路線で接する一方、歴史認識問題をめぐり反日的姿勢を鮮明にさせている。このままでは日韓関係は悪化の一途をたどりかねない。

反日カード切る文政権

 日韓両政府は2015年末、いわゆる従軍慰安婦問題をめぐる合意で「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した。だが、文政権は昨年11月、合意に基づき元慰安婦らへの癒やし金支給などを行ってきた「和解・癒やし財団」の解散を発表した。

 日本統治期に強制的に動員されたという朝鮮半島出身の元徴用工に対する賠償訴訟では、1965年の日韓請求権協定などで個人の請求権は消滅したとする日韓両政府の共通認識があった。にもかかわらず保留になっていた大法院(最高裁)の審理が文政権下で突然再開された。昨年10月に賠償命令判決が確定。これに基づき日本企業の韓国内資産を差し押さえようという動きが始まっている。

 文政権は歴史認識で当初から日本に強硬な姿勢を見せていたわけではない。南北と米朝の融和ムード維持には日本の協力が欠かせなかったためだろう。

 ところが、相次いだ南北・米朝首脳会談が一段落すると態度を一変させた。市民団体の要求が強まり、経済失政などで支持率が低下するなど国内事情を無視できなくなって反日カードを切ったようだ。

 悪化する日韓関係に追い打ちをかけたのが、韓国海軍駆逐艦による海上自衛隊機への火器管制レーダー照射だ。発生からすでに半月が経過したが、双方の主張には隔たりがある。現場の映像公開に踏み切るなど応酬が続くが、韓国の主張には一部無理もある。日本側には文政権の反日路線が引き起こした「人災」という不信感がある。

 忘れてならないのは、日韓関係の悪化が中朝両国を利するという点だ。対立の間隙を縫って独裁や武力挑発を一層加速させる恐れがある。

 特に、制裁や圧力で北朝鮮に完全非核化を迫ろうとしていた日米韓3カ国の連携が崩れ始めているのは深刻な問題だ。文政権は制裁解除や経済支援など見返りを提供すれば北朝鮮が非核化に応じると楽観する。しかし、それは甘い幻想にすぎないのではないか。

 北朝鮮が独裁体制や大量破壊兵器開発を決して諦めないことは南北分断後、約70年間にわたる北朝鮮政権の本質が変わっていない以上、自明の理だ。

求められる未来志向

 一方で日韓は経済協力や文化・人的交流の面で良好な関係を維持している。近年、互いに嫌韓感情や反日感情が広がっても堅調だった。安全保障上の脅威に備えることに加え、アジアや世界で両国が果たすべき中長期的な役割まで見通すべきだ。未来志向の関係に向かうことが求められている。