9月日銀短観、一段と強まる景気失速の懸念
日銀が発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業で景況感が3期連続で悪化した。
原油高や自然災害が企業心理を圧迫したためだが、米国と中国などとの貿易摩擦を警戒する声も増えている。企業の先行き不安が強まっており、景気の行方は要警戒である。
貿易摩擦で景況感悪化
企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、大企業製造業で「良い」との回答割合が「悪い」を上回るプラスの状態が、2013年6月調査から5年以上続いている。DIの水準自体は今回の調査でもプラス19と高いが、3期連続の悪化はリーマン・ショック前後の07年12月調査から09年3月調査まで6期連続で悪化して以来、約10年ぶりである。
大企業非製造業のDIも、前回調査のプラス24から同22と悪化したものの水準自体は依然高い。今回、北海道地震や台風21号、大雨など相次ぐ自然災害の影響で訪日客が減少し、国内でも外出を手控える動きが響いて「宿泊・飲食サービス」や「運輸・郵便」などで悪化が目立ったが、影響は一時的にとどまるとの見通しから、企業の景況感は全体としては横ばいと強気に見る向きもある。
が、やはり最大の懸念は米中間の貿易摩擦である。トランプ米政権は対中制裁関税の第3弾を発動し、中国からの年間輸入実績(約5000億㌦)の半分に高関税をかけ、中国も報復関税で応酬している。日本企業にも米国向け製品の生産を中国から移管する動きが出てきた。
今回の短観では、自動車や鉄鋼、化学など幅広い業種で貿易摩擦の影響を懸念する声が聞かれる。大企業製造業の景況感の3期連続悪化に「製造業を中心に頭打ちが鮮明になりつつある」との見方も少なくない。
実際、対米輸出で関税上乗せリスクにさらされる自動車で、3カ月後の見通しを示す先行きDIは大企業が2ポイント、中小企業が9ポイント悪化した。先の日米首脳会談で関税上乗せが当面は回避されたとはいえ、「最終的にどう着地するかは分からない」というのが業界多数の声である。
先行きDIは大企業製造業、大企業非製造業とも横ばいだったが、これは自然災害の影響が一服すると予想される半面、貿易摩擦への懸念から経営者が先行きに慎重な姿勢に傾いているということであろう。
それでも、心強い面はある。大企業全産業の18年度の設備投資計画が、先行きに慎重な見方を持ちながらも、前年度比13・4%増(前回調査は同13・6%増)と小幅な下方修正にとどまったことである。
これは、今回の調査で大企業全産業の雇用人員判断DIがマイナス23と2期ぶりに「不足感」が広がり、省力化投資を進めざるを得ない現状があるからであろう。緩やかながらも拡大を続ける景気と、生産年齢人口減少への対応である。
米中経済の動向に要警戒
貿易摩擦での関税引き上げの応酬から中国経済に陰りも見られる。利上げした米国経済の動向によっては世界経済の拡大に黄信号がともりかねない。日本経済にとっても要警戒である。