内閣・自民人事、新たな国づくりへ挑戦せよ
第4次安倍改造内閣が発足し、自民党の役員人事も行われた。安倍晋三首相は、政権の土台と位置付ける麻生太郎副総理兼財務相や菅義偉官房長官、自民党の二階俊博幹事長らを留任させるとともに、閣僚の半数以上を初入閣させた。
首相が「全員野球内閣」と命名したように、新たな国づくりに向け緊張感をもって結束して挑戦してもらいたい。
首相に劣らぬ意思必要
今回の人事で注目されるのは、閣内にいた加藤勝信厚生労働相を党の総務会長に起用したことだ。内閣改造後の記者会見で首相は、憲法改正について「自民党がリーダーシップを取って、次の国会で改正案提出を目指していくべきだ」と強調したが、党改憲案に最終決定の「了承」を与える責任者が総務会長である。総裁選で対抗した石破茂氏に投票した竹下亘氏から首相の側近の加藤氏に代えたことは、首相の改憲への強い意志の表れと言える。
党の改憲推進本部長に下村博文氏を就任させたこともそれを裏付けている。首相は「下村氏の下、議論を深めて作業を加速してほしい」と語った。下村氏としても、自民党がすでに提案した9条改正、緊急事態条項、参院選「合区」解消、教育の充実の4項目の条文素案を条文化するという重責を担うことになる。加藤氏との連携と共に、首相の意気込みに劣らぬ改憲実現への意思が求められる。
連立を組む公明党に対しても「丁寧に説明しなければならない」と語った。これに対して公明党の山口那津男代表は慎重な姿勢を見せ、各党の代表が集まる衆参両院の憲法審査会での議論を提案している。これをどうクリアするのか、首相の手腕が問われるところだ。
会見で首相が「国難」と表現して対応の必要性を強調したもう一つの緊急課題が少子高齢化および人口減少の問題だ。子育て、医療介護、年金を含む全世代型社会保障改革担当を茂木敏充経済再生担当相の所管にしたことは政権の目玉と言えよう。
ただ、少子化問題を社会保障のくくりで解決できるかは疑問だ。少子化克服には社会の在り方の変革だけでなく、子供を産み増やす結婚や家族の価値を重視するという国民の意識変革が不可欠のはずである。安倍政権はその国民への啓蒙(けいもう)を怠り続けてはいないかよく検証して対処すべきだ。
外交も重要課題だ。「戦後日本外交の総決算」を掲げる首相には、北朝鮮による日本人拉致問題やロシアとの北方領土問題の解決という難題が控えている。日米間でも物品貿易協定(TAG)交渉を進めなければならない。経済問題でもアベノミクスの総仕上げをする段階に入ってきている。過去2回延期した消費税の増税も実施するか否か決断を迫られる。
自民は挙党一致で臨め
政治日程も、アジア欧州会議(ASEM)首脳会合や中国訪問、アジア太平洋経済協力会議(APEC)、天皇陛下退位、大阪での20カ国・地域(G20)首脳会議など目白押しだ。自民党は総裁選で生じたしこりを解きほぐし、挙党一致体制で臨時国会に臨んでもらいたい。