14年度予算案はデフレ脱却にはまだ力不足


 2014年度予算案が決まった。一般会計総額は95兆8823億円と過去最大で、13年度補正予算案と合わせた歳出規模は101兆円超となる。

 政府はこれにより、来年4月の消費増税による景気腰折れの回避を狙うが、個人消費に直結する家計への負担を和らげるには十分ではない。14年度後半の補正編成も念頭に置き、デフレ脱却を確実なものにしたい。

 消費増税への対策不十分

 一般会計は13年度当初比3・5%増である。社会保障や公共事業、防衛などほとんどの分野で増額になった。

 高齢化の進展、東日本大震災からの復興や老朽化したインフラの補修・更新、20年東京五輪・パラリンピック開催に向けた交通網整備、中国・北朝鮮によって厳しさを増す安全保障情勢などを考慮すれば、増額は当然である。

 14年度はデフレ脱却の途上であるにもかかわらず、4月に消費増税が実施される。しかし景気腰折れ回避のための5・5兆円の経済対策では、増税で最も影響を受ける家計への対策が低所得者世帯などへの1回限りの現金給付のみ。総額は6500億円にすぎない。

 現行5%から8%への税率引き上げによるデフレ効果は約8兆円で、経済対策だけでは十分ではない。財政支出総額でみても、今回の14年度当初予算と13年度補正で総額101兆円超だが、「15カ月予算」として編成された12年度補正と13年度当初予算の総額103兆円弱と比べれば1・5兆円の減額で、デフレ型予算である。

 政府は14年度の税収を13年度当初予算比16%増の50兆円台と見込む。増税で消費税が同44%増、法人税も同15%増の予想だが、増税の影響を甘く見ていないか。

 安倍政権はデフレ脱却を目指したこの一年で、その兆しが出てくるところまでこぎ着けた。そして、今回の経済対策でも「アベノミクス」の第3の矢、成長戦略の担い手となる企業への優遇措置に重点を置いた。

 だが、その企業は12月の日銀短観が示すように、消費増税による影響を懸念して景気の先行き悪化を見込み、景気の牽引(けんいん)役である大企業製造業は設備投資計画を下方修正した。

 先の政労使会議では、企業収益の改善をベースアップ(ベア)に反映することで政労使が一致した。だが、実際に来年の春闘で、消費税率の3%引き上げに伴う消費者物価上昇率以上のベアが実現するかは、企業の対応如何である。

 その意味では、成長戦略をより実効あるものにするため、コスト増要因である電気料金の引き下げに向け、安全が確認された原発の早期再稼働に一層の努力を払うべきである。4兆円近い国富の不要な流出も防げる。

 自律的景気回復へ努力を

 政府の債務は確かに大きいが、金融資産も多くあり、それを差し引いた純債務は全債務の約半分である。日本は世界一の対外純債権国で、財政危機の国ではない。

 今後の状況次第では、新年度後半に補正編成に躊躇(ちゅうちょ)なく取り組み、自律的な景気回復へ努力すべきである。

(12月26日付社説)