訪日客1000万人突破、「観光立国」実現へ課題は多い
今年わが国を訪れた外国人(推計値)が、政府目標の年間1000万人を突破した。
「観光立国」の実現へ、まずは一つのハードルを越すことができたが、まだまだやるべきことは多い。
円安やビザ緩和が追い風
1000万人という数字は、小泉純一郎首相(当時)が、2003年に観光立国の実現に向け、10年までを目標に掲げた。しかし、08年のリーマン・ショック、11年の東日本大震災、東京電力福島第1原発事故、そして円高などの影響で訪日観光が冷え込み、3年遅れの達成となった。
円安で訪日旅行が以前より割安になったこと、所得水準が上がっている東南アジア向けのビザ発給要件の緩和などが追い風となった。
ただ、12年の訪問外国人数で日本(836万人)は依然として33位にとどまる。首位のフランス(8302万人)の1割にすぎず、アジアでも、3位中国、10位マレーシアのはるか後塵(こうじん)を拝し、23位の韓国(1114万人)にも及ばない。このため、13年の観光白書は「ようやく『観光新興国』になったにすぎない」と指摘している。
しかしそれでは日本が、これらの国々と比べて観光資源が乏しいかといえば、決してそんなことはない。風光明媚な景勝地、歴史的な遺産、文化、そしてショッピングや食など、魅力的な観光資源は山ほどある。
問題は、外国人観光客の受け入れ態勢が十分整っていないことにある。日本は昔から国内観光が盛んな国で、宿屋、お土産、そして「おもてなし」など独特の観光文化が発達した。しかし、それはあくまで日本人向けのものであった。
政府は訪日外国人数を、東京五輪が開催される20年に2000万人にまで上積みしようと期待を掛けている。
そのための環境整備として、3年間で何度も入国できる数次ビザをミャンマーの旅行者に発給するほか、新興国の富裕層を取り込むため、一定条件を満たせば長期滞在できる制度を創設する方針という。また、交通機関や美術館での多言語案内表示などを進めていく計画だ。
東京五輪の開催決定だけでなく、富士山が世界文化遺産、和食が世界無形文化遺産に登録されたことも、外国人観光客の日本への呼び込みに弾みとなるに違いない。
しかし2000万人という目標を達成するには、例えば「おもてなし」にしても、もっと洗練させる必要があるだろう。それは押しつけがましいものではなく、あくまで相手の立場に立った、きめ細かいものでなければならない。リピーターを獲得できるか否かも、一つにはここにかかってくる。
そのためにも、訪日外国人へのアンケート調査などをこれまで以上に行い、改善点を探るべきだ。日本人が気づかない意外なところに楽しみや不便を感じていることは十分あり得る。
「おもてなし」に磨きを
日本の観光資源の一つと言っても過言でない「おもてなし」にさらに磨きをかけ、次の2000万人という目標を達成していきたい。
(12月25日付社説)