GDPマイナス、景気の先行き不安が強まった
今年1~3月期の実質国内総生産(GDP)は、前期比で2年3カ月ぶりにマイナス成長となった。個人消費、設備投資など内需は総崩れで、輸出も伸びが鈍化し、景気回復の足踏み状態が鮮明になった。
4~6月期は所得環境の改善などからプラスに転じるとの向きもあるが、目立った牽引(けんいん)役が見当たらず、輸出を左右する海外環境には米中貿易摩擦など懸念材料が少なくない。経済の好循環を目指す「アベノミクス」には停滞感が漂う。
家計の弱さを浮き彫りに
1~3月期のGDPは改めて家計の弱さを浮き彫りにした。天候不順の影響もあって野菜やガソリンなど身近な生活必需品が値上がりしたことや、1~2月の大雪の影響で飲食サービスの利用が手控えられるなど、GDPの約6割を占める個人消費は低迷し、2四半期ぶりにマイナスに転じた。企業の設備投資や住宅投資も弱く、民需全体が低調だった。
景気の牽引役となってきた輸出は、自動車の好調などでプラスを維持したが、アジア向けスマートフォン用電子機器の需要が一服して伸びは鈍化した。牽引役不在で、内需が経済の好循環を形成するどころか、景気の足を引っ張った格好である。
4~6月期については、野菜価格の落ち着きや新年度に先送りされた設備投資の増加が見込まれることなどからプラス基調に戻るとの見方がある。上場企業の2018年3月期決算で幅広い業種で過去最高の利益計上が相次いでいることもあり、政府は「景気は緩やかに回復している」との見方を変えていない。
ただ、春闘での賃上げは今年も2%台にとどまり、原油高による物価上昇が続く可能性がある。中東情勢など地政学リスクや米中貿易摩擦の行方など懸念材料も少なくない。景気は単に足踏みしているだけなのか、先行き不透明感が拭えない。
安倍政権としては、19年10月には10%への消費税増税を予定しているだけに、それまでに増税が及ぼす経済への悪影響に耐え得る、力強い経済の好循環を形成したいところだが、心もとない状況である。
政府・与党が6月中の策定に向け調整を本格化させている新たな財政健全化計画では、基礎的財政収支(PB、国と地方が借金に頼らず税収などで政策経費を賄えているかどうかを示す指標)の黒字化を、現計画より5年遅い25年度までに達成するとの目標を設定する方向と伝えられる。経済の現状からすれば妥当な線である。硬直的に、現状に合わない過度な歳出削減に走れば、経済を痛め、税収が少なくなって健全化に逆行する事態となるからである。
消費低迷への対策を
茂木敏充経済財政担当相は会見で「今は(執行段階にある)17年度補正予算、18年度予算を迅速かつ着実に実行することが重要だ」と語り、現時点で追加財政支出は必要ないとの考えを強調した。確かに年度初めであり、景気対策の検討は早計だが、何もしないでいいわけではない。内需、特に消費の盛り上がらない原因を明らかにし、その対策を着実かつ地道に実施すべきである。