10~12月GDP、一段と落ちた成長の勢い
実質で前期比0・1%増(年率0・5%増)で、約28年ぶりとなる8四半期連続のプラス成長――2017年10~12月期の国内総生産(GDP)の速報値である。
8期連続プラス成長は確かに誇れるが、成長の勢いはさらに弱まっている。最近の株価急落など金融市場の混乱もあり、今後が心配である。
家計部門の低調さ目立つ
17年10~12月期は、世界的な好況を追い風に企業が設備投資や輸出を拡大し、8四半期連続のプラス成長と息の長い景気回復を主導した。GDPの約6割を占める個人消費もプラスに転じた。
実質GDPの増減に対する寄与度は、内需が0・1%、外需がマイナス0・03%(輸出0・4%、輸入マイナス0・4%)。外需のマイナスは、輸入が前期比2・9%増と、輸出(前期比2・4%増)以上に伸びたためで、悪い数字ではない。輸出は6期連続、企業の設備投資は5期連続の増加で、今回の成長は企業部門が牽引(けんいん)した形である。
個人消費は、17年7~9月期に長雨という天候不順などの影響で0・6%減と落ち込んだ反動もあって、10~12月期はプラスに転換したものの0・5%増にとどまった。
個人消費については前7~9月期とならせば横ばいであるとし、また住宅投資も10~12月期は2・7%減と2期連続のマイナスであり、家計部門の低調さが目立つとする識者もいる。
特に気になるのは、成長率の低さ、景気拡大の勢いの弱さであり、それが今後どうなるかである。10~12月期の前期比0・1%増という数字は、前期(0・6%増)から弱まり、ここ2年間で最低の水準。世界経済の好調さを背景に企業部門が成長を支えたにもかかわらず、である。先行きについても、不安材料は少なくない。
1月の街角景気は、ガソリンなど石油製品の値上がりや野菜価格の高騰、寒波や大雪が影響して、現状判断指数が2カ月連続で悪化。好不況の判断の分かれ目となる50を6カ月ぶりに下回った。さらに最近では米国を“震源”とする株式市場の急落で、日本の株式市場も調整色を強めている。
経済が勢いを回復するには個人消費の安定した伸びが必要である。それには所得の増加が欠かせず、18年春闘の行方が当面の焦点になってこよう。
春闘で賃上げのリード役となる自動車大手の労使交渉がスタートし、経営側は14日に労働組合から出された要求を受け、基本給を底上げするベースアップ(ベア)を5年続けて実施する方向で検討に入った。ただ、電気自動車(EV)シフトや自動運転の技術開発など厳しい国際競争に加え、株安・円高の加速懸念などもあり、首相が要請する「3%以上の賃上げ」が実現するかどうかは不透明である。
名目の前期比減も要注意
17年の名目GDPは約546兆円と2年連続で過去最高を更新した。物価変動の影響を反映し生活実感に近い名目GDPは税収に関わる大事な数字である。10~12月期に前期比0・03%減、年率0・1%減となったことも要注意である。