東芝は原発事業で大打撃を受け、そのあおりで…
東芝は原発事業で大打撃を受け、そのあおりで半導体メモリー事業の売却を余儀なくされている。不正会計などで上場廃止の恐れもあり、巨大企業は深刻な経営危機に直面している。
半導体の重要技術は軍事転用も可能であり、それが中国や台湾などに渡ると国益を大きく損なう。一企業の問題では済まされない。
かつて半導体産業は日本経済成長の牽引(けんいん)役だった。コンピューターや半導体など日本のハイテク産業が著しく発展したのは、1970~80年代。これらは米国で生み出されたが、半導体でDRAM(記憶装置)の技術発展の方向を正確に予測し、市場展開したのはわが国だった。
この分野で取るべき産業政策と企業戦略を官民が協力して見定め、実行していった過程は実に見事だった。この日本型システムは「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と評価された。
当時の産業政策の伝統を引き継いだのは東芝だけで、社内で開発された「NAND型フラッシュメモリー」への転換を可能にした。日の丸半導体の栄光が続くかに見えたが、経営のもう一つの柱であった米国での原発事業による巨額損失の影響を受け、今回の事態が引き起こされた。
もっとも半導体にせよ原発にせよ、この半世紀の最新技術の発展と市場への展開は、陰に陽に日米合作の面が小さくない。トヨタも現在、米国市場での問題を抱えているが、こうした状況は日米合作新時代の予兆と言えるかもしれない。