「木蓮に漆のごとき夜空かな」(三宅清三郎)…
「木蓮に漆のごとき夜空かな」(三宅清三郎)。公園でモクレンの花が咲いているのを見掛けた。そのムラサキが光り輝くようだった。白い花を付けるモクレンもある。
「翳る白輝く白の辛夷見ゆ」(千原叡子)。近くにモクレンに似た白い花が咲いた木があった。それはコブシ(辛夷)だった。モクレンとコブシとは似ているので見間違いやすい。樹皮に樹木名のプレートが掛けられていて区別できたが、両者の違いはよく分からなかった。
稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』によれば、コブシは「高さ5~10メートルで山地には20メートルにおよぶものもある。(略)形は木蓮に似て少し小さい」とある。モクレンは「2~4メートルの低木で葉に先だって紫色または白色の大きな六弁の花を付ける」。
「木蓮と辛夷の区別わかりけり」(長谷川昌子)。木の高低や花の大きさによって区別ができるようだが、両者ともモクレン科に属しているので似ているのは当たり前だ。
それにしても、春の日射しの中で咲くモクレンやコブシは、優雅で気品が漂っている。桜にも劣らない春の花と言っていい。俳句の雑誌にも「辛夷」がある。現在、1000号を超えている。
昭和47(1972)年のきょう、作家でノーベル文学賞を受賞した川端康成が自殺した。川端は日本の伝統的な美を描いたが、その死は三島由紀夫の割腹自殺の影響があると言われている。忌日の花としては、桜よりもコブシの方がふさわしい。