自律的拡大へ内需の強化を


 2016年7~9月期の国内総生産(GDP)は実質で前期比0・5%増、年率では2・2%増と3四半期連続のプラス成長で、15年1~3月期(年率5・0%増)以来の高い伸びになった。

 とはいえ、成長は外需主導で内需が相変わらず弱く、自律的な景気拡大と呼ぶには程遠い状況である。個人消費や設備投資など内需を強化する取り組みが欠かせない。

 個人消費の弱さ変わらず

 7~9月期の実質GDPは、寄与度を見ると内需がプラス0・1%なのに対し、外需がプラス0・5%と外需主導の成長である。確かに、外需の成長率の押し上げには、アジア向けを中心に好調に推移した輸出の影響もあるが、輸入の減少という面もある。輸入の減少は内需の弱さを裏付けるものであり、成長率の数字を見て喜んでばかりはいられない。

 直接的な内需の項目である個人消費や設備投資の弱さは、相変わらずである。GDPの6割弱を占める個人消費は、3期連続のプラスになったが、伸びは前期比0・1%増と小幅。天候不順で飲料や衣料品が減少する一方、米アップルの新型スマートフォン「iPhone7」の発売もあり、辛うじてプラスを保った。だが、こうした一時的な要因を除けば、消費の基調は依然として力強さがない。

 設備投資は今回、3期ぶりにプラスに転じたが、伸び率は0・03%増とほとんど横ばいである。年初からの円高傾向を受け、企業の投資への慎重姿勢は相変わらずで積極性がない。

 内需でめぼしいのは、マイナス金利を背景にした住宅ローン金利の低下が追い風となった住宅投資(2・3%増)のみ。だが、その伸びも鈍化してきている。公共投資は0・7%減と3期ぶりに減少し、前期(4~6月期)を押し上げた15年度補正予算などの政策効果も弱まっている状況である。

 今回、成長を牽引した輸出の増加は、アジアを中心にスマホ関連部品などが伸びたためだが、熊本地震などの影響で前期に落ち込んだ反動が出た面もある。消費や設備投資などの内需の弱さを勘案すれば、3年ぶりに3四半期連続のプラス成長となったとは言え、日本経済が本格的な回復軌道に乗ったとは、とても言える状況ではない。

 外需が成長を主導し、それが牽引(けんいん)役となって消費や設備投資を活発化させるというシナリオも描けないわけではない。だが、世界的に低成長が見込まれる状況では、それも期待しにくい。安倍晋三政権が目指す経済の好循環によるデフレ脱却は、内需主導の力強さが肝要である。非正規社員の正社員化や賃上げ、設備投資を促すなど内需強化への取り組みが欠かせない。

トランプ氏に期待と懸念

 「強い米国の復活」を訴えて次期米国大統領に決まったトランプ氏の経済政策を、市場は現在、期待感も持って受け止めている。

 一方、環太平洋連携協定(TPP)の離脱とともに保護主義的な政策も表明していることへの懸念も残るなど、これまた先が見通しにくい。同氏が進める閣僚人事の行方を注視したい。