駆け付け警護、国際常識に沿った活動を
政府は、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に参加する自衛隊に「駆け付け警護」任務を付与する。これで派遣部隊が現地で武装集団に襲われた際には救助してもらうが、他国部隊や人道支援組織が襲撃されても助けないという異常な状態が一部解消されることになる。当然の措置である。
安保法踏まえ任務付与
これは今年3月に施行された安全保障関連法を踏まえたものだ。従来はPKOで派遣された自衛隊部隊は、派遣地で人道支援のための国連組織、ボランティア団体が武装集団に襲撃され、救援を求めてきても、断るか、苦肉の策として「輸送」名目で対応するしかなかった。
それでいて我が派遣部隊が襲撃された際には、他国の部隊の救援を求めてきた。「国内法上の法的根拠がない」というのが理由とされた。だが、この対応は国際社会の常識として理解され難く、日本だけで通用するものである。これでは日本のせっかくのPKOへの協力も、水泡に帰すことになりかねない。
菅義偉官房長官は、駆け付け警護の任務付与について「国際貢献に大きく寄与できる」と意義を強調。「救援要請があった場合、自衛隊が近くにいて何もしない、というわけにはいかない」とも語った。
PKOは国連憲章の精神を踏まえたものである。派遣部隊の行動は自衛権行使ではなく、集団安全保障の一環であり、国際武力紛争法(戦時国際法)やPKOマニュアルに基づかなければならない。だからこそ一国の軍事組織を他国に派遣し、行動することが国際法で許容されているのである。
政府は「派遣地域は戦闘行為が行われていない場所」と説明している。しかし、内戦では「前線」「銃後」の区別はあり得ない。そのために、戦闘能力がある武装部隊が派遣されるのである。従って、内戦に巻き込まれる危険性は常にあることを念頭に置く必要がある。
日本のPKO派遣部隊は施設部隊であり、戦闘能力は低い。その一方、最近は反政府勢力、ゲリラも最新兵器を保有しており、派遣部隊自体が危険にさらされていることを忘れてはならない。このため、駆け付け警護任務部隊への対応に際して留意すべき諸点がある。
政府と軍の関係においてシビリアン・コントロール(文民統制)は重要だ。しかし、だからと言って政府が派遣部隊の行動に細かく介入すべきではない。第2次世界大戦後の武力紛争に限っても、政治による現地部隊への過剰な介入は、すべて所期の目的に反する結果を招いているからだ。
PKOだから派遣要員に死傷者が生じないわけではない。殉職警察官よりも低い扱いの殉職自衛隊員への対応を、この際再考すべきである。現地での経験を踏まえ、政府の方針で派遣部隊に課している諸条件の再検討も忘れてはならない。
有事の防衛活動に益する
いずれにしろ、図上演習、小規模演習しか実施できない自衛隊にとって、PKOは低烈度の戦闘活動である。従って、日本有事の防衛活動に益するところは大きい。