元女優大麻事件、危険伝える教育の徹底を


 元女優の高樹沙耶容疑者が大麻取締法違反(所持)で起訴された。岡山と茨城両県では、高校生らが同じ容疑で相次いで逮捕されている。薬物乱用防止の啓発・教育に力を入れ、“大麻汚染”の拡大を食い止めたい。

 若年層の乱用傾向増大

 高樹容疑者にはかねて大麻使用の噂(うわさ)があった。今年7月の参院選に新党改革から出馬して「医療大麻」の解禁を訴えたが落選。自宅からは大麻の吸引に使用したとみられるパイプが10本以上見つかっており、供述では使用を認めているという。

 一緒に起訴された男は、大麻研究などを禁止する大麻取締法4条の廃止運動を行っていたとされる。使用が事実とすれば、医療大麻の解禁は、嗜好(しこう)品としての使用容認に誘導するための口実だったのではないか。大麻の有害性を見誤らせる危険な活動である。

 大麻のうち、乾燥した花や草を細かく刻んだものをマリフアナ、樹脂を固めたものはハシシュと呼ばれる。含まれる成分のうち、テトラヒドロカンナビノール(THC)には強い幻覚作用や酩酊(めいてい)感があるほか、心臓や脳、生殖機能にも悪影響を及ぼすことが知られている。

 また、長期間持続的に乱用していると依存や耐性が生じるため摂取量が増えるとともに、覚醒剤をはじめとした、さらに強い違法薬物に走るきっかけになることも多い。このため「ゲートウエー(入り口)ドラッグ」とも呼ばれている。わが国では、研究目的などで都道府県知事の免許を得ていない限り所持、栽培、譲渡は禁じられている。

 だが、大麻事犯の検挙者は昨年、5年ぶりに2000人を超えた。警察庁は背景として「若年層による大麻の乱用傾向が増大していること」を挙げている。

 1年前、京都市山科区の小学6年生(当時)が、高校生の兄が部屋に所持していた大麻を吸っていた事実が発覚し、教育・警察関係者に衝撃を与えた。また今月に入って、岡山市の私立高校3年の男子生徒、それに茨城県茨城町で高校生3人と少年の計4人がそれぞれ大麻を所持していたとして逮捕されている。

 薬物乱用防止のための啓発活動を行っている民間団体「日本薬物対策協会」の意識調査によると、生徒の半数近くが「大麻を入手可能」と答えた中学校があった。若年層を中心に危険性に対する甘い認識と魔の手が広がっていることがうかがえる。

 そうした風潮を煽(あお)っているのは海外の動きだろう。米国では大統領選挙と同時に、幾つかの州でマリフアナの合法化を問う住民投票が行われた。そのうちカリフォルニアなど3州で、嗜好品としての使用が認められることになった。

 関係者は一層の努力を

 年齢制限はあるが、日本の若者がこれらの州を留学や観光で訪れた際、マリフアナを使う懸念もある。帰国しても、外国では「合法化されているのだから」と、罪悪感もなく違法使用する人間が増える恐れもある。

 そんな状況では、学校教育の段階から、大麻をはじめとした薬物についての知識と乱用の危険性を徹底して教えることが重要である。教育・警察関係者の一層の努力を促したい。