訪日客2000万人、官民挙げ4000万達成を


 訪日外国人数が初めて年間2000万人を突破した。政府は3月、観光ビジョンを策定し、訪日客を2020年に4000万人に引き上げる新たな目標を設定した。目標達成へ官民を挙げて取り組んでいきたい。

 3年間で一気に倍増

 2000万人という数字は、当初20年の達成目標とされていた。しかし観光ビザ発給要件の緩和、航空路線の新規就航、さらに円安などの影響で、13年に約1000万人だった訪日客は3年間で一気に倍増した。

 2000万人という数字はあくまで「一つの通過点」にすぎないが、この勢いでさらに4年後に倍加させるためには、多くの課題がある。訪日客の約6割が東京、名古屋、京都、大阪を結ぶいわゆる「ゴールデンルート」に滞在している。地方への誘客が重要だ。

 このため、政府は全国から景観、歴史、あるいは温泉といったテーマ性を持たせた「広域観光周遊ルート」を公募し、兵庫から山口、愛媛などを行く「せとうち・海の道」など11ルートを認定。兵庫や岡山など瀬戸内海に面する7県と民間企業は「せとうち観光推進機構」を設立し、魅力をアピールし訪日客を呼び込もうとしている。地方への誘客は、地方創生の切り札の一つともなり得る。

 もう一つの鍵とみられるのが、繰り返し日本を訪れるリピーターの拡大だ。もう一度日本に行きたいという気持ちにさせるには、まず初めての滞在が日本の魅力を感じ、楽しく満足のいくものでなければならない。そのためには「おもてなし」の心がやはり大切だ。

 中国からの訪日客の爆買いも下火になった。これからは「モノ消費」から日本文化体験など「コト消費」に移っていくだろう。着物での散策体験など、さまざまなアイデアが求められる。

 日本が極めて多彩な地方色を持つ国であることを訪日客に知ってもらうことも、リピーター拡大の鍵となる。外国語の案内板や外国語の話せる観光ガイドの充実など、地方における受け入れ態勢の整備が急務だ。

 そして最も大きな課題となるのが、宿泊施設の確保である。ある試算によると、20年に訪日客が4000万人に達した場合、東京都内で1800万人分の宿泊施設が不足する可能性がある。

 この問題の解消の切り札として期待されているのが、マンションの空き室などを宿泊施設として利用する民泊だ。2泊3日から可能になるよう規制が緩和されたが、まだまだ試行錯誤の面が多い。軌道に乗るように、ルールをさらに整備していく必要がある。

 インターネットでの情報発信も、誘客につながろう。都市、地方を問わず、無線通信Wi-FiなどIT環境の充実は欠かせない。

 十分な資源を生かそう

 海外からの観光客が滞在することで、日本が経済的に潤うだけでなく、明るさと活気が出てくる。

 日本が観光立国さらに観光大国となるための資源は十分にある。あとはそれをどう生かし、アピールしていくかにかかっている。