経済対策の一日も早い実行を
内閣府が発表した2016年4~6月期の国内総生産(GDP)は実質で前期比0・04%増、年率換算では0・2%増だった。辛うじて2期連続プラス成長にはなったが、実質横ばい状態で景気は依然として足踏みを続けている。
個人消費は相変わらず勢いを欠き、設備投資はマイナス。輸出も振るわず、訪日外国人消費にも陰りが出ている。内外需とも不透明感が強まる中では、景気対策が欠かせない。政府が決定した経済対策の一日も早い実行が望まれる。
円高などでGDP横ばい
成長に力強さが全く見られない。4~6月期GDPは、2期連続のプラス成長にはなったが、前期比0・04%増。実質、横ばいである。円高による輸出の落ち込みに加え、GDPの6割弱を占める個人消費は同0・2増と依然勢いが戻らない。景気の牽引(けんいん)役と期待される設備投資は同0・4%減で2期連続のマイナスというありさまである。
設備投資のマイナスには、円高による収益悪化のほか、英国の欧州連合(EU)離脱問題や中国経済の減速などもあって先行き不透明感が強く、企業が積極的になれないという側面もある。海外要因による不可避的な影響である。
こうした景気の現状は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」が目指すデフレ脱却、また、それを実現するための「経済の好循環」ができておらず、民需主導の本格回復には程遠い状態であることを示している。14年4月の消費税増税が何とも悔やまれる。
消費税率10%への引き上げを19年10月に再延期したこの期間は、日本経済の再生に真剣に取り組むべき時である。内需主導の成長を実現する上で、牽引役不在の状況では経済対策が不可欠だ。同時に人口減少時代を迎え、生産性の向上につながる持続的な成長政策が必要である。
政府が大型の経済対策を決定したのは当然である。今回、公共投資がプラス成長に寄与したのは、政府のこうした姿勢を反映して、予算計上された公共事業を早期執行したことが小さくない。
政府の経済対策は総事業規模28兆円。うち、いわゆる真水部分の財政資金は約7兆円相当である。当面は公共事業などが中心になるが、まずは景気のベクトルを着実に上向かせることが肝心である。あとは持ち直した景気を確実に拡大させるために、民間活動をどう誘発し活発化させるか。いわゆる成長戦略の中身の問題である。
個人消費の低迷には所得の伸び悩みという理由のほかに、年金など将来不安から積極的になれないという面もあろう。その意味では、持続性ある社会保障制度の構築に向け、制度の見直しを着実に進めていくことが重要である。
日銀は慎重に出口戦略を
現在の超低金利は、本来であれば得られるはずの利子所得を過度に奪い、国民に負担を強いている側面がある。日銀としてはデフレ脱却の達成に努力するとともに、金利正常化へ向けた出口戦略を、先駆けて歩む米国の経験を踏まえながら慎重に進めてもらいたい。