朴大統領演説、未来志向の日韓関係構築を
韓国の朴槿恵大統領は15日、日本の植民地支配からの解放記念日「光復節」の記念式典で演説し、日韓関係について「歴史を直視する中で、未来志向的な関係を新たに築いていかなければならない」と述べた。
昨年の演説まで目立っていた歴史認識問題をめぐる対日要求は影を潜めた。朴大統領が新たな日韓関係の構築を強調したことは喜ばしいことだ。
THAAD配備にも言及
朴大統領は慰安婦問題には直接言及しなかったが、昨年12月末の政府間合意に基づいて「和解・癒やし財団」が発足したことが、今回の演説内容に反映したと言えよう。日本政府は今月、財団の運営資金となる10億円の拠出方針を正式に決めた。元慰安婦は高齢化が進んでおり、日韓は協力して支援を急がなければならない。
演説で注目すべきは、安全保障問題への言及だ。朴大統領は北朝鮮の核開発を批判するとともに、在韓米軍への地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備決定について「北朝鮮の無謀な挑発から国民の生命を守るために選択した自衛権的な措置だ」と力説した。
THAAD配備に対しては、レーダーによる国内の探知が可能だとして中国が強く反発している。朴大統領の発言は、こうした中国の態度を念頭に置いたものだ。
中国は今月、北朝鮮による中距離弾道ミサイルの発射を受け、日米などが国連安全保障理事会で目指した報道機関向け非難声明の採択に難色を示し、結局採択は見送られた。この背景にもTHAAD配備への反発があるとされるが、こうした国が安保理常任理事国にふさわしいとは思えない。
朴大統領は「私たちの運命が強大国の力学で決められるという悲観的思考を振り払う必要がある」と述べた。中国の反発に揺らぐことなく、THAAD配備を実現して北東アジアの平和と安定に向けた体制を強化することが求められる。それとともに、日米韓3カ国の防衛協力を一層進めていくべきだ。
一方、朴大統領の演説に象徴される日韓関係改善の流れに水を差すような動きがあったのは残念だ。韓国の超党派の国会議員団は同日、ヘリコプターで竹島(島根県隠岐の島町)に上陸した。
菅義偉官房長官は「竹島領域に関するわが国の立場に照らし、到底受け入れられない。事前の抗議、中止の働き掛けにもかかわらず、訪問が強行されたことは極めて遺憾だ」と述べるとともに、韓国政府に強く抗議して再発防止を求めた。当然の措置である。
議員団の団長を務めたのは、与党セヌリ党の女性議員、羅卿瑗・前外交統一委員長だ。同議員は次期大統領選に意欲を示していると報じられている。このため竹島上陸は政治的意図を持ったパフォーマンスにすぎないのではないかと、韓国内でも冷めた目で見る向きもある。
日本政府の対応を評価
日本政府は「和解・癒やし財団」への10億円拠出は、予定通り実施するとの考えを示した。大人の対応として評価される。